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2にしおりをはさみました!
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そこでようやく、神は桃麻の存在に気付いた。
気付いたのだが、その反応は思いも寄らないものだった。
舞をやめ、翼をぶわりと膨らませ、文字通り飛び上がって舞殿の屋根に頭をぶつける。そのまま再び舞台上に落下して、混乱したように首を左右に動かしながら、両手をばたばたと振り回し、二、三歩後ろに飛び退くと、端の方で震えながら縮こまってしまった。
「何もそこまで……」
桃麻は唖然としながら一連の神の反応を眺めていた。
その取り乱しようといったら、とても邪神とは思えない。まだ人慣れしていない幼子のようだ。
「確かに俺は退治屋だけどさ、その反応はさすがに大げさだろう。無視したのはあんたなんだし」
桃麻は震えている神の目の前に屈み込むと、ため息をつきながら顔を覆う布の端に手をかけた。びくりと神が身体を震わせたが、桃麻は構わずそれをめくりあげる。
「こんなもんつけてるからちゃんと見えないんだろ。ほら、外して……」
そこで、手が止まった。ついでに息も止まってしまった。
布の下には、何もなかったのだ。
目も、口も、鼻も。
ただ白くきめ細やかな肌がさらりと続いているだけで、人にあるべきものが何一つない。
恐る恐る艶やかな横髪をかき分けると、その下に隠れているはずの耳もなかった。
沸き立つ動揺を抑えるように、細く長い息を吐きつつ、桃麻は神の布から手を放す。
「やっぱり今までにない類いのヤツだな……」
今まで何匹もの悪鬼邪神を相手にしてきて、おどろおどろしいものはたくさん見たが、それでも目も耳も鼻も口もないものは初めてだ。確かにこういうことなら、声をかけても聞こえないのも触っただけで過剰反応されるのも納得がいく。
しかしこの状態なら、余計にこの神が邪神なのかが疑わしい。
触覚以外の感覚がなく、ただ舞い踊っているだけ。さらにはこの美しい神域をの主であろうこの神が、あの村に害を及ぼしているとは思えなかった。
神殺しは慎重にやらなければならない。もし邪悪でない神を殺してしまった場合には、何が起こるか分からないのだ。
「殺すかどうかは、こいつのことを調べてからにするか」
そう決めた桃麻はもう一度神の右腕を掴む。そして再び飛び上がって暴れようとする神を落ち着かせるように、その肩をできる限り優しく叩いた。
「大丈夫だ。……と言っても聞こえないか」
なだめるようにしばらく肩を撫でていると、次第に神は大人しくなり、こころなしか安堵しているような様子を感じた。
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