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風邪にしおりをはさみました!
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風邪
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陸「失礼しまーす」
内山「おっ、高橋少年。もう平気なの?」
引き戸をカラカラと開いた先で、回転椅子に腰掛けた内山先生がくるりとこちらに体を向ける
発情期の周期が狂った事、そして長引いた事を内山先生に相談しようと保健室を訪ねた
陸「その節はどうも、ありがとうございました」
内山「いいのいいの、お礼なんか」
内山先生は手の甲をひらひらさせて笑い、卓上のマグカップを手に取り口をつけた
コーヒーの芳ばしい香りが鼻先をくすぐる
陸「それで、相談なんすけど」
他に誰も居ないことを確認してから保健室の扉を後ろ手に閉め、机のノートパソコンと向かい合う内山先生から少し離れた椅子に腰掛けた
内山「なになに、恋の相談?」
陸「いや、そういう訳じゃなくて…」
昼休み、窓の外からは校庭で走り回る男子生徒たちの元気な声が聞こえている
目を輝かせて興味津々の内山先生に若干押されながらも俺はゆっくりと喋り始めた
陸「前回の発情期の周期がずれてて…予定より数週間も早くきたんです。症状も重かったし、期間も普段より長かったんで、気になって」
腕を組み、俺の話に真剣に耳を傾けていた内山先生
内山「……それって」
心当たりがあるのか、内山先生は少し考えるように指先を口元にやり脚を組み替える
内山「もしかすると…」
「失礼します」
喋り出した内山先生の声を遮るように扉が開いた
陸「あ」
恭二郎「…っス」
虎岩だった
マスクをして、一段と威圧感が増している
虎岩は俺を見て少し驚いたように目を開いたが、ゆっくりと保健室へ入ってきた
虎岩「すみません、体調、悪くて。少し休ませて下さい」
内山「あらあらあら、酷い声ね」
確かに、虎岩の声は枯れていて酷いものだった
額が少し赤くなっている
普段のずっしりとした足取りとは打って変わりフラフラとベッドへ歩み寄る
本当に具合が悪そうだ
内山「こっちのベッド使いなさい、今毛布持ってくるからね」
陸「お前、大丈夫かよ」
保健室の簡易ベッドが虎岩の巨体に堪らず軋む
虎岩に毛布を渡し、さらに手際よく氷袋を用意する内山先生
内山「寒くない?確か職員室に湯たんぽがあったはずだから取ってくるね、高橋君ちょっと彼のこと見ててあげて」
そう言うと内山先生は保健室を出ていった
パタパタとスリッパの音が遠くなっていく
陸「おい、風邪か?…もしかして、あの時雨で濡れたから…」
虎岩が俺を家まで送り届けてくれた時
雨の中傘を持っていなかった
もしかしてこいつはあの後、あのままずぶ濡れで帰ったのだろうか
恭二郎「…自己管理ができてなかっただけっす」
俺を気遣っているのか、ベッドで横になりながら答える
乾いた咳を繰り返す虎岩の額にはじんわりと汗が滲んでいた
充血した目は潤んで、眉間にはシワが寄っている
俺は何故か焦って、その辺にあったタオルを手に取って虎岩の額の汗を拭った
陸「何か、飲み物買ってこようか?」
恭二郎「いや、いいっすよ…」
陸「遠慮すんなって、自販機すぐそこだし」
恭二郎「…………じゃあ、水を」
陸「オッケー待ってろ」
俺は自分の胸ポケットに小銭入れがある事を確認し、保健室を出た
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