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そして、獣の視線が命じる。もう我慢できないんだろ、と。
(どうしよう。あからさまに、誘われている…。)
宵宮は大きく気持ちを揺り動かされつつ、息苦しく感じるネクタイの結び目をそれとわからない程度に緩めた。
朝倉の飢えた眼差しは、無視出来ないほど苛烈なものになっていた。御主人様の意志に、虜囚である男は逃げられない。真っ向から、獣と目が合った。
(抱かれたいんだろ、なぁ??)
愉悦を含んだ嗜虐的な視線に、宵宮の背は歓喜に震えゾクゾクする。何度か座布団の上で座りなおして…観念するようか細い声を上げた。
「…トイレ、行ってくる。」
誰よりも早く、目の前の獣が大きく頷いた。…舌なめずりを繰り返すかの如く。
「ああ。“気を付けて”行って来いよ??」
(お前以上に警戒しないといけない奴なんて、他にいねぇだろ…。)
ふしだらな熱を持て余しながら、獲物は処刑台までの階段をあがるためにのろのろとその場から立ち上がる。
トイレは男女別の一つしかない個室になっていた。しかし、廊下で数mの距離で隣り合わせだ。男子トイレで騒動があったら、女子トイレに入っている人間に聞こえそう…、と考えながら、宵宮は男子トイレの扉を開けた。トイレは洋式で、個室そのものは一畳分くらい。お世辞にも、広いとは言い難い。トイレに入って数分もしない内に、男子トイレの扉が乱暴に叩かれる。
「…開けろ。」
別人だったらどうするつもりだったのか、朝倉の高圧的な声が聞こえてくる。おずおずと施錠を外し、宵宮はゆっくりとではあるが着実に自分の意志で扉を最後の砦を明け渡す。
「…ずっとこうしていたかった。」
朝倉のアルコールの所為か色っぽく掠れた声が聞こえてくる。気づいた時にはあっという間に朝倉の腕に仕舞いこまれ、ほぼ同時に獲物は唇を奪われていた。視界の隅で、トイレの扉を朝倉が器用に後ろ手で閉めたのが見えた。宵宮も片手を伸ばして、ロックをかける。薄暗いトイレで悪だくみに加担する、二人は立派な共犯者になった。
「…っん…。」
(こんなところで…っ。上司や同僚の誰かが、ノックをしにくるかもしれないのに…。)
宵宮は最初難色を示したものの、徐々に抵抗感は溶け消えていく。獣の熱く深いビール味のキスに、アルコールなんて比じゃないほど陶酔していく…。
ただでさえ狭めのトイレの個室は、獣達が繋がりを深める度に、いっそう温度を増していくかのようだった。
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