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rev .26にしおりをはさみました!
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rev .26
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そうこうするうちに岡崎が戻ってきた。後ろには大悟がいる。シラサカと目が合うと、こくりと頷いた。
「話は聞いたってことだな」
「はい。わしの覚悟は決まってます。師匠とマキマキの手伝いをさせてください!」
「今俺達と離れれば、普通の警察官でいられるんだぞ」
ハナムラのことを他の人間に話せば、その時点で岡崎の人生は終わりを告げるが、黙ってさえいれば、その後の人生は問題なく過ごせる。
「マキマキに最初会うたとき、こんな警察官おるわけない思いました。そやけど、それを誰かに話そうとは思いませんでした。四課で色んな人間を見てきましたから」
捜査四課は暴力団関係の事案を扱うため、岡崎は必要悪の存在を理解している。近年、日本の暴力団が衰退したせいで、中国マフィアの進出、半グレ集団による特殊詐欺等々、犯罪は巧妙になってきている。
「本当にいいの? 僕、ツトムンとはただの飲み仲間でいたかったんだけど」
いつになく真剣な顔で訊ねるマキ。
「おまえと師匠に惹かれる時点で、わしは警察官失格なんや。そっち側に足を踏み入れてるんや」
岡崎はまっすぐマキを見つめて言った。本当に覚悟を決めているようである。
「こうなったからこそ話しますけど、わしは副本部長の指示で師匠と行動してますが、今朝本部長から直々にお声がかかりまして、ある指令を受けたんです」
岡崎がいう本部長とは大阪府警のトップのことである。初耳のシラサカはマキと顔を見合わせた。
「府警のトップは、おまえに何を言ったんだよ」
「副本部長の身の安全を確保するようにと。その為なら、どんな手を使ってもかまわないからと」
府警のトップは田中の身に何か起きることを予測していた。それはハナムラに命を狙われることか、それとも先程の乱射事件のことなのか。
「K、マキ、パソコン用意するからちょっとだけ待って」
先程のマキと同じように大悟も右耳を指差すと、ベッドルームからノートパソコンを持ってきて、リビングのテーブルに置いた。おそらく岡崎との会話をレイに流していたのだろう。
ハニーもレイみたいになりつつあるな。性格だけは似てほしくないけど。
大悟の成長を喜びつつも、複雑な心境になるシラサカだった。
「レイさん、すんませんでした!」
大悟がテーブルにノートパソコンを置いて操作すると、画面上にレイが現れる。岡崎は画面に向かって深々と頭を下げた。
『謝る必要はない。俺達とおまえでは属する組織が違う。府警のトップからの命令なら、逆らうことなど出来やしないだろう』
やがてレイは隣にいるシラサカにこう語りかけた。
『いいのか、シラサカ。岡崎は府警の人間だぞ』
「本人が希望してんだから仕方ねえだろ。府警の情報も欲しいしな」
警視庁の管轄なら直人や蓮見から情報を引き出せるが、ここは大阪のため、警視庁の力は使えない。
『府警の本部長である倉田宗玄(くらたそうげん)は草薙よりも序列が上で、草薙より先に警視総監になるはずだった男だ』
「草薙がそいつを追い越して警視総監になっちゃったってこと? だったら仲良くないよね」
マキが聞いた。
『そういうわけでもない。俺が速攻で大阪へ行けたのは倉田の口添えがあったからだ。八尾空港への飛行機チャーターにOKを出した上に、府警のSATに俺達の素性を隠した上で、特別捜査協力者としたからな』
「草薙さんと繋がりがあるなら、田中さんが狙われることを知っていてもおかしくないのかも」
大悟が言った。すると岡崎は手を挙げ、こう発言した。
「あの、副本部長が狙われてるってどういうことですか?」
花村から田中に処分命令が出ていることは、岡崎には知らせていない。勿論、依頼主が草薙であることもだ。
「あ、え、そ、それは……!?」
うっかり口を滑らせたことに気づいた大悟が慌てる。
『言ってなかったがな、田中には処分命令が出ている。こうなったから話すが、依頼主は警視総監の草薙だ』
「一週間以内に契約不履行となりうる事態が見つからなければ、僕がバラすことになってるよ」
レイの後にマキが続いた。岡崎は驚きのあまり、言葉を失った。
「ごめんなさい……」
小さな声で呟いた大悟は、あからさまに落ち込んだ。あの一言で岡崎は後戻り出来なくなったから。
「謝らなくていいよ、ハニー。遅かれ早かれわかることだからね」
大悟の腰を抱き、頬にチュッとキスをする。
『今日はここまでにしよう。岡崎はマキと行動を共にするように。明朝、改めて話し合うから、各自体調を整えておくこと。以上だ』
レイが一方的に締めくくって、今夜はお開きとなった。
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