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優しい君にしおりをはさみました!
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優しい君
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交番の前まで来たところで高橋は俺にここで待っているよう告げて、一人で犬を連れていった。
こっそり家をでている身としてこの時間帯に交番に出向くのは危ういように思ったので、有難かった。
やっぱり高橋って意外といい奴なのかもしれないな、外見と授業態度は最悪だが根本できなところはとてもしっかりしているんだろう。
むしろ俺のように言われた事しかしないし、親や周りの目ばかりを気にてる奴なんかよりずっとちゃんと生きているような気がする。
ありのままで、強くて、自由で、、、凄いな。
だからって俺は今までずっとこれで生きて来たわけだから、高橋みたいになれる訳ないし、今更生き方変えたって痛い目みるだけだ。
ただ今日、高橋に会えて良かったと思う。まだ数時間しか共にしてないけど、人の噂で作られた彼と、実際に話して感じた彼では全然イメージが違うし、凄くいいやつだってわかったし、それに俺は今日、結構楽しかった…
もう、やることは終わったしそろそろ解散しなきゃいけないかな、結局俺が拓馬君とやらではないということも言えなかった。
でも、もう高橋とこんなふうに話すことはないだろうし、明日からはまた俺と高橋は知人ですらない。
だからそれでいいんだ、高橋には俺が拓馬君だって思われたまま解散しよう、いい奴だって事は分かったけど高橋はやはり俺とは違う世界の人間で、俺の日常に高橋は必要ないし、高橋の世界にも俺はいらない。
きっと次、高橋が教室に顔を出す頃には俺の事は忘れてくれているはずだ。
高橋との時間がこれきりなことに少し寂しさを感じるのは、先程の時間が余りにもキラキラ輝いて見えるからだろう。
今までの人生が余りにもつまらない物だったからだろう。
「ただいま」
すぐ後ろから高橋の声が聞こえる。警察が預かってくれたのかもう犬は連れていない。
「あいつさ、やっぱり飼い主が必死で探してたらしくて、連絡いれたらすぐに迎えがくるだろうってさ」
「そっか……」
ほっと息がでる。
早く、一秒でも早く飼い主に会えたらいいな…。
飼い主の姿をみて、尻尾を振って大喜びする姿が目に浮かぶ。自然と頬がほころぶ。
「よかったな」
高橋が俺の顔を覗き込み言う。
「えっ、あぁうん、よかった…」
突然現れた高橋の顔に驚きながらもそう答えると、高橋は微笑み、俺の顔をジッと見た後、体を元に戻した。
何だか凄く嬉しそうに見える。
なんなんだ?俺へんな顔してた?俺が怪訝な顔をしていると。
「さっきの顔してたから。」と高橋が言う、なおも俺が怪訝にしていると「ほら、公園で犬に、、」
あぁ!俺の決死の微笑み!あの時はどうにかしないとって夢中だったからな。
無意識にあんなにニヤケてたのか…しかも高橋に見られた。
俺が軽くショックをうけていると。
「またいいもん見れた。と思ったから嬉しくて。」そう高橋は言った。
「いいもんって男のニヤケ顔なんてきもいだけだろ?」ショックから立直れぬまま言うと。
「まぁ、そうでもねぇよ。俺は結構好きだったぜ?」と、ニヤっとした顔で俺をみた。好きって……
「変な奴」
「変って……。まぁ、そうなのかもな」自分でも思うところがあるようで高橋は一人で考えこみだした。
犬のことは一段落ついたので、もう一つ心配していたことを聞いてみようと思った。
「怒られたりしなかった?」
考えこんでいた高橋はきょとんとして「何が?」とゆうふうに俺を見る。
「いや、だってこんな時間に外をうろついてた訳だし。何か言われなかった?」
俺が俯いてぼそぼそと決まり悪そうに言うと、高橋はピンときたみたいで。あぁなん~だそのことね。と何でもないように笑ってみせた。
「まぁ、なんも言われなかったって言ったら嘘になるけど、俺みたいなのはあんなの慣れてるし。向こうも言い慣れてっからさ」
俯いてる頭に手を乗せてポンポンっとしてくる。
「心配してくれてた?」
「だって本当は俺も行くべきなのに、、」身の縮む思いに顔がさらに俯く。
すると俺の頭に乗っている高橋の手がいきなりわしゃわしゃと髪を掻き乱してきた。
「わ!やめろ!」
高橋の手を振り払い顔をあげると優しい顔をした高橋と目が合い。
ッ、、、、、。文句の一つでも言ってやろうとしたが全て飲み込んでしまう。
「本当、大丈夫だからあんまし気にすんな、心配してくれてありがとな?」
「いや…別に……」少し顔が熱い、赤くなっているのを高橋に見られたくないので顔をそらす。
俺も結構、変なのかも……いや高橋はイケメンだからしかたないんだよ。
イケメンって羨ましい、、、俺が女子なら完全に惚れてたな。てか俺は何でこんなに動揺してるんだ、なんか心臓もバクバクいってる。
「それよりさ、これ飲もっか」
一人で混乱している俺をよそに高橋は完全に冷め切っているであろうコーヒーをどこからか取り出してきた。
そういえば、まだ飲んでなかった。
なんだ、まだ解散しないのか、、、、心のどこかがホッとしているのがわかる。
いや、なんでホッとしてるんだ?確かに高橋と一緒にいるのは新鮮で楽しいけど、あまり関わりたくないのは今も同じだ。
駄目だ、余りにもいろいろな感情を与えられて感覚が麻痺してきている。
でも、ココアを買ってもらっといて誘いを断るのも悪いよな?
そうだよな?なら仕方ないよな。
そう頭に言い聞かせ、いつポケットにしまい込んだのかわからないがそこにあるココアを取り出す。
とりあえず、座ってゆっくり出来るとこをとのことで、先程の公園に向かうことにした。
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