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可愛い君にしおりをはさみました!
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可愛い君
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優が一息つき
「冗談はさておきだね」と切り替える。
冗談だったのか?
気まずそうに言う、優の言葉を鵜呑みにできず、疑いの目線を送る。
俺からの目線を完全によけて優は話を続けた。
「斗真はちょっと単純過ぎると思うんだよね、もっと柔軟な頭を持たなくちゃ」
「俺が、単純?」
「お前その、今知りました。みたいな反応やめろ、笑えないから」
俺の言葉にすかさず健人からのツッコミが入る。
ボケて言った訳ではないのだが、健人の目が余りにも切実だったため、反論はやめておいた。
「まぁ、だから。さっき言ったように、頭硬すぎなんだよ。世の中はyesかno、白か黒、1か100だけじゃないんだよってこと」
「お、おう」
戸惑いながらの俺の返事に優は呆れた。
「わかってないね。だからさ、答えを出すのはまだ早いんじゃないの?斗真の答えはnoって言われて条件反射でyesって言ってるようなもんだと思うんだよね。考えればもっといい答えは出てくるんじゃないかな」
なるほど、今のは何となくわかった。
「まぁ、確かにそのへんは俺も同意だな。お前は悪いことにしろ、良いことにしろ、考えが率直すぎんだよ」
健人の方からも賛成の声が上がる。
「別に全部が全部マイナスになるわけでもないし、あんま悪いようにばっかり考えんな。起こるかわからない未来のことに縛られててもしかたねぇし、起こったら起こったでその時にまた考えることもできる」
「そうそう、それにまだ全然、向のこと知らないし、出会ったばっかりなんでしょ?」
「あぁ」口篭りながらも答える。
「なら、なおさら諦めるのは早いよ。向こうだって斗真のことあんまり知らない訳だし、どう転ぶかは全く未知数じゃない」
「そう…だよな」
二人の言葉に、沈んでいた気持が浮き上がる。
「そうだよ、まだまだこれからこれから」
優のその言葉に健人が「そうだな」と頷く。
「俺、もうちょい考えてみるわ」
そう言いながら、俺は二人の顔をまじまじと見つめ
「お前ら……実はすげぇいい奴だったんだな。」とつぶやいた。
「その、今知りましたって反応やめてくれる?笑えないから」
そう言って優はニヤッとする。
健人は薄っすらと微笑む。
俺も、二人に笑いかけ
「優、健人。今日、引っ張り出してくれてありがとな、」と言った。
きっと、昨日の電話が無ければまだ、家で落ち込んでいただろう。
俺の言葉に二人は顔を一瞬きょとんとさせ
「どーいたしまして」
「どーも」
とつぶやいた。
それから、俺はこれからのことを考えるべく、一人で思考を巡らせていった。
考えてみれば、答えは簡単で。ただそれをあいつが受け入れてくれるかが凄く不安だ。
また、この前みたいに拒絶されたらどうしよう。とか、そもそももう話すら聞いてくんねーかもとか。
俺ってこんなにマイナス思考だったけな、と考えつつ。気づけばもう一日が終わっていた。
だんだん日が落ちるのもゆっくりとしだして、夕方と言われてもあまりピンとこず、生徒たちがちらほらと帰路につきだすのを見てやっともうこんな時間か。と自分も帰宅することを考える。
「斗真~俺と健ちゃんはもう帰るけど、まだここで悩んでる?」
優から、冷やかしの入った言葉をかけられる。
「いや、俺ももう帰るわ」
そう言って二人のあとに続いた。
三人で帰宅している途中、少し腹に何か入れて帰ろうとの事で、近くの商店街へ入った。
「どこで食べるー?やっぱりマックかな」
「マックか~」
「なに?何かほかある?」
色々とだべりながら歩いていると、目の端にあるものが見えた。
それは、商店街の並びにある宝石店の店内にいて。
ガラス張りの扉からこっちを伺っていた
おまえ…ここの奴だったのか。
尻尾を振ってヘッヘッと舌を出している姿は、何日か前に見た姿と変わらず、首にはグッチの首輪が付けられている。
宝石店の看板犬……そりゃグッチの首輪も付けるわな。
俺が、じーっとそいつを見ていると
「斗真~どうしたの、早く行くよ~」
と優から声がかかる。
パッと顔を戻すと、優と健人は少し先に立っていた。
「あ…あぁ。ごめん」
そうつぶやいて小走りで二人の元へ行きながら、あいつに教えてやりたいな、と考えた。
やっぱり、明日にでももう一度あいつと話そう。そう心に決めた。
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