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優しい君にしおりをはさみました!
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優しい君
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高橋と映画に行く約束をしてから何日かたち、俺は勉強の片手間に高橋と連絡をとりあい、その日の予定などを決めていった。
ただ闇雲に話すのではなく、ちゃんしたゴールのある会話は返事が返しやすいことがわかった。
観る映画を決めたり、上映時間を決めたりと、色々やり取りをしているうちにケータイの操作にも少しず 慣れてきた。
もう返事を返すのに10分も掛からない程だ。
こんな短期間でここまで成長した自分を褒めてやりたい。
観る映画は結局、俺が決めた。
高橋は映画に行くと決まった翌日に、早々「俺は、怨霊2がみたい」などと言ってきたので全力で却下し、代わりに「猫たちの逃走劇」を提案したところ「なんだそれ(笑)面白そうだな。」とのことだったので、映画は「猫たちの逃走劇」に決定した。
内容はいまいち分からない映画だが、名前に猫とあったのでそれにした。猫たちの逃走劇…面白いのだろうか?俺的には感動するタイプのやつだと思うのだが……まぁ観てからのお楽しみか。
他も順調に決まっていき。後は日にちを決めるだけとなった。
これといって都合の悪い日は無いのだが、いざ決めてしまおうと思うと、なかなか決めれないでいる。
日にちが決まってしまうと、もう本当に逃げられない。
いや、ここまできたら既に手遅れなんだろうけど。
でも、「いつか行く」と「この日行く」ではプレッシャーのかかり具合が違う。
あーどうしようかな。
カレンダーと顔を突き合わせ、うんうんと唸りながら考える。
「明希〜お父さん行っちゃうわよ」
30分程カレンダーと仲良くしているところで、母のから声が掛かった。
あ、そうか。父さん今日から東京行くんだった。
忘れていたわけではないが、つい映画のことに気が取られていた。
「ちょっとまって、今行く」
そう言ってカレンダーを元の位置へ戻し部屋を出た。
玄関へ行くと、父はもう靴も履き終わり、後はドアノブに手をかけるだけ、といった感じで俺を待っていた。
「じゃあ行ってくる。」
俺の存在を確認し、父は口を開いた。
「うん、いってらっしゃい。」
「勉強を疎かにするんじゃないぞ。」
「わかってる、ちゃんと試験の結果は連絡するようにするよ」
俺の言葉に父は頷いた後、母のほうへ顔をむけ
「じゃあ、留守は頼んだ。何かあれば連絡してくれ」と伝えた。
「ええ、わかったわ。気をつけてね」
「ああ」
こうしてみると仲の良い家庭のようにも感じる。
父親の長い留守に、心もとない息子と母親。
第三者からの目線ではそう見えるかも知れない。
そう見えるようにしているのだからそれで正解なのだ。
こういう場面で自分達が「普通の家庭」であることを自分自身に見せつけ安心させる。
テレビドラマや、噂で聞くような「壊れた家庭」など、自分とは無縁の話だと思いたいのだ。
あと、他者からもそう思われたい。
どうしても、世間のレールからは逸れまいと耐えているのだ。
ほんと、必死だよな…
「それじゃあ、行ってくる」
「いってらっしゃい」
見送りは玄関までで、父が扉を開けて出て行くのを俺と母はそのまま見送る。
バタンと、玄関扉が閉まり父が出ていった後、一瞬の間沈黙がうまれる。
母は、ふぅ。とため息を吐き
「明希、朝ごはん出来てるから早く食べなさい」
とだけ言って先にリビングへ足を進めた。
1人でテーブルに座り、朝食を食べていると、母が手近な椅子を引き、腰を下ろした。
「お父さんのいない間に行くっていってた旅行なんだけどね、日にちが決まって。7月の12・13・14日で行こうと思ってるの。だからその三日間は明希、家で一人で留守を頼まなきゃいけないんだけど…大丈夫よね?」
「大丈夫だよ」
母の言葉に一つ返事で返す。
「ご飯はお金を渡しておくから好きに食べるわよね?それとも、何か作っておく?」
「適当に食べるから大丈夫だよ」
「そう」
会話はそれで終了し、母はまた席をたちソファーの方へ座り沖縄のガイドbookなどを読み始めた。
7月12・13・14日か……ちょうど期末試験も終る頃。母がいないとなると家を出やすい。
12・13は週末だし。
高橋と遊ぶにはちょうどいい感じなような気がする。
一度高橋に聞いてみようかな。
ケイタイを取り出して高橋にメールを送る
「映画に行く日にち何だけど。7/12.13のどちらかだとありがたいんだけど。高橋はどっちか空いてる?」
しばらくしてすぐに返事が返ってくる。何で高橋はいつもこんなに対応が早いんだ。
そんなにケータイってマメにチェックするもんなのか?
「どっちも空いてるけど、土曜日の方がいいかも。」
土曜日。ということは12日か。
「わかった。じゃあ12日な。あと、気になってた事があるんだけど。高橋って試験勉強とかしてないのか?」
メールの返しも早いし。学校で授業を聞いている素振りもないし。以前は授業にも出ていなかった。そうとうやばいんじゃないだろうか。
別に俺がとやかく言うことではないが、少し心配だ。試験の時くらいは流石に勉強するのだろうか?
いつも、すぐに返事が返ってくるのに今回はなかなか返事がない。
程なくして、ケータイがなりメールを確認すると
「ああ。まぁ大丈夫だ」
とゆう、曖昧な返事がきた。
大丈夫なのか?まぁ、高橋がそういうのならば大丈夫なのだろうが、どうにも怪しいもんだな。
「それならいいんだけど。俺はこれから試験まで勉強に集中しようと思うから連絡できないと思う。」
そうメールを送ると、またなかなか返事がこず、しばらくして送られてきた内容には
「わかった。」
とそれだけ書かれていた。
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