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優しい君にしおりをはさみました!
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優しい君
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いつもと雰囲気の違う教室にチャイムが鳴った。いつもと変わらぬチャイムだが、今回のは生徒、教師共に違った意味をもつチャイムだ。
そう、試験終了のチャイムだ。
このチャイムと同時に生徒たちを待ち受けている物は夏休みである。
教室内は、先程のテストに自信がないと呻くものと。結果なんてもうどうでもいいわーい。と勉強に開放され、後は遊ぶのみだ。と騒ぐもので賑やかだ。
俺はというと、先程の問題で少し自信の無いものがあったのでそれを確認している。
これが合っていたらもう思い残すことは無い。
お願いします、合っててください。
心の中で願いながら、問題の正確な答えを探し出す。
………よし。合ってる!よかたぁ。やっぱこっち書いててよかたぁ。
心の中でガッツポーズをし、ホッと一安心しているところで、横から「あーもうおわった……もう嫌だ、何で俺はこんなにダメな奴なんだ、いつかこの世から消えるんだったら俺は今きえるべきなんじゃないか……」
と秋原の気力のない声が聞こえた。
秋原は机に両腕をだらけさし、ふさぎ込んでいた。
「秋原……」
「やめてくれ、そんなかわいそうな奴を見るような目で俺を見ないでくれ日高。俺だって頑張ったんだ」
「あ、いや。消えるとかそこまで言わなくても。さっきのやつそんなにできなかったのか?一緒に勉強したところとかも結構あっただろ?」
俺がそう言うと、秋原はガバっと俺の方へ体を起こし、聞いてくれ!と言わんばかりに詰め寄ってきた。
「それが……」
「それが?」
「途中から回答欄が一個ずれてた……」
「あー。あれね」
「もう気づいた時には遅くて…必死に消しゴムで消したんだ、そしたら丁度全部消し終わった時にチャイムが鳴って。こんなことなら、ずれたままのやつ提出してたほうがまだ望みがあったのに!!」
そう言って、秋原はまた自分の机に突っ伏した。
「まぁ、秋原元気だせって、大丈夫だから」
と秋原をなだめてみるも全く効果はなく、俺なんか…俺なんか…と、どこまでも沈んでゆく。
可哀想な秋原、でも俺は秋原のことよりも更に、哀れに思わざるおえない存在を知っている。
当の本人は今だ爆睡中なのだが…
高橋……お前さっきのテスト中、ずっと寝てただろ……
さっき、とゆうか。俺が思うにほぼ全てのテストで高橋は爆睡していた。
全然、大丈夫じゃないじゃないか。どの辺の視点で見て大丈夫って言ったんだ?
高橋には就職に困らないような、つてでもあるのだろうか。
いや、もしあるにしても、勉強はしとかないとまずいだろ。
後で困るのは高橋なんだからな。俺と遊んでる暇なんかあるんだったら今からでも勉強した方がいいんじゃないか…?
とゆうか、本人が何にも気にしてなさそうなのに、何で俺がこんなに心配してやらなきゃいけないんだ。アホらしい。
俺がそう考えているうちに、高橋はもぞもぞと起きだしてケイタイを触り出す。
しばらくして俺のケータイにメールが届いた。
まさか、と思うとやはり高橋からのメールで内容は
[やっと試験終わったなー。これで日高もメールできるよな?映画も、もうちょっとだし楽しみだ]
とゆうものだった。
いいのか?これで。
まぁでも、高橋の人生だしな。俺に口をはさむ権利はないか。
俺は、色々言いたいことを押さえ込み
[ああ、そうだな。]
とだけ返した。
横では今だ、秋原が怪物のように唸っている。
俺は、はー。とため息をつき、
秋原のその絶望を少しでも高橋に分けてやってくれ…と思った。
数日後にはテストの採点も終わり、掲示板には順位表が張り出された。
「日高、もういいよ。俺見たくない。」
今にも消えてしまいそうな声で、そう言う秋原を連れ、俺は早速掲示板を見に行った。
うん。なかなかの順位だな。これなら父への報告も余裕だ。
総合の順位でも2位と差をつけて1位をとった。
「日高……」
俺が自分の結果に満足しているところで、秋原が口を開いた。
俺は、問題の秋原の順位を確認した。
あー。流石に殆ど白紙じゃこうなるよな……でも…
「日高!凄いぞ!!見てくれ!流石にあのボロカスだった教科はボロカスだけど、総合の順位が上がってる!!!ボロカスだったのに!!やべえ!これ記入間違いしてなかったらもっと上だったってことだよな?!すげ!!」
秋原は目をリンリンと輝かせて言う。
「ほら、だから大丈夫だって言っただろ?秋原、凄い吸収いいもん。今回のテストだいぶ変わるだろうなって思ってたから」
「ひだか~!!お前のおかげだよ!お前が教え方上手いから、本当ありがと!」
秋原は今にも踊りだすんじゃないか、とゆうくらいの喜びを見せている。
テストが終わてからというもの秋原はずっとふさぎ込んでいたので、これで安心した。
「秋原が頑張ったからだろ?次は記入ミスない順位だそうな!」
「おう!!」
ふんふん~。と鼻歌まじりに自分の総合順位を写メっている秋原をよそに、俺はもう一人気になっている名前を探す。
あった。高橋斗真。
……コレは。予想通りとゆうか、予想以上というか。酷いもんだな。
高橋の名前は表の一番下か下から二番目とゆうものばかりだ。
俺がそのことに驚いているところで、俺の横へ誰かが来た。
ふと、そちらに顔を向けると。そこにいたのは、高橋の友人である相川健人だった。
俺の目線に気づいてか、もとから気づいていたのか、相川は俺のほうへ目線を向け
「どーも」
と言った。
今までそんなに認識したことがなかったため、まさか話しかけられるとは思っておらず、何も反応できなかった。
そんな俺をよそに相川はまた口を開く。
「今回も総合一位だったな。おめでと」
「え?あ…ああ、ありがと…」
戸惑いを隠せないまま返事をすると、相川は
「うわ、斗真と優は今回もケツか。卒業するつもりあんのかあいつら…」
と呆れながらぼやいていた。
俺はその言葉が気になり、気づいたら
「高橋、いつもこんな感じなのか?」
と質問していた。
「気になる?」
「いや、ちょっとだけ。」
くそ、変なこと聞くんじゃなかった。でも今回だけではなく、ずっとこの順位では、本当に高橋は卒業できないのでは?と思ってしまいつい口がすべってしまった。
「いっつもこんなだよ、あいつ」
「そ、そうなのか」
「まぁ、俺としては、もう一人の問題児のほうが心配なんだけどな」
「もう一人?」
「いや、こっちの話。とりあえず斗真のことはたのんだわ」
と相川はそれだけ言って、さっていった。
何なんだ。
頼んだと言われても。困る。俺は高橋と頼まれるような仲ではない。
「日高~教室戻ろうぜー」
俺がモヤモヤと考えていると、秋原が俺を呼ぶ声がする。
「あぁ、ちょっと待ってー」
俺はそう言って、機嫌よくスキップをする秋原の後を追った。
何はともあれ、試験は無事終わった。
そして、本当にあと少しで高橋と映画だ。
今のところ、あの日からメールでしか会話してないし。教室にはいるが目だってろくに合わしていないし。
何だろうこの不思議な感覚は。
高橋とちゃんと会って話す…
そんなこと、あの夜の日からなかったんじゃ無いか?
その後のやつなんて、一回目は俺がすぐ逃げたし、二回目の屋上だって一瞬だったし。
今更ながら怖気づいてしまっている自分がいる。
あーどうしよう。また頭ぐしゃぐしゃされるのかな。
あのイケメン笑顔を間近で見ないといけないし。
怖いな……
取敢えず、高橋が危険人物だということはわかっているので、なるべく離れて過ごさなくてはいけない。
それと、今回は平常心をたもつ‼︎‼︎
もうあんなに取り乱したりしない!
俺は高橋と会うにあたって、そう心に決めた。
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