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=Ring1= 004.にしおりをはさみました!
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=Ring1= 004.
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廊下に出ると、床と壁の狭間に力なく横たわる少年の姿が見えた。
急いで駆け寄る藍(ラン)。
僕はその後をゆっくりと追う。
「だ、だいじょぶ…ですか…」
奴隷相手にじぶんまで片言になる藍を見て微笑ましいなと感じる。
奴隷の少年はひく、ひくと泣いていたが、知らない男に声をかけられてビクついたようだった。
一瞬硬直して藍を、そしてちょうど辿り着いた僕を見上げる。
「ひ……ッ、ご、ごめんなさ…!」
僕と目があった刹那、目に怯えを走らせた少年は自らの頭を抱えるようにして叫びはじめた。
叫び…というかなんというか、小さいながらも甲高い音だったのでおそらく上ずった悲鳴なんだろうなと思っただけだが。
この子の喉は随分発達してないんだな、本当に声が小さい。
藍が焦ったように僕を見上げる。
「薔(ショウ)ったら、威嚇しちゃダメだよ。この子が怖がるから」
「ごめん」
素直に謝って、僕は藍の隣にしゃがみこんだ。
まだ震えながらぎゅっと目を閉じている少年の腕をさらりと撫でる。
藍の背筋を撫でるように、愛するようにゆったりと。
敵意や邪神のない優しい触れ方に少し緊張を解いたのか、少年がおそるおそる腕を緩める。
「……ぁ…」
「君、名前は?」
藍がつとめて優しく尋ねると、彼はぴくんと一瞬震えた後、小さな声で言った。
「……ぁりま……せ……」
「………………そう……」
名前がないと聞いて悲しげに眉を顰める藍に心の底から愛しさを覚えたが、今は目の前に奴隷がいるのでこの一件を片付けてからにしようと思い直す。
まったく困った。
この後の藍の行動が予測できるだけに。
「……………うちにおいでよ」
唐突に言った藍の表情はうつむいていて読めなかった。
ただ髪の間から見えた唇が微笑んでいるのが見える。
「僕と一緒にいこう。優しくする。ひどく扱ったりしない。ちゃんとごはんを食べさせてあげる。約束するよ。だから!」
茫然として事態が呑み込めない奴隷の少年にむかって、藍はパッと顔を上げると明るい笑顔を浮かべた。
「一緒に行こう!」
ああ、そうだ。
何度も見てきたこの目。
父を殺された時の。
一人で眠る時の。
快楽に溺れた時の。
あの目だ。
僕の大好きな目。
ピンクの瞳に黒のリングが、くっきりと浮かんでいた。
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