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「お疲れ様でした!おれ、こっちなんで。失礼します!」
「おー、おつかれフリ。気をつけて帰れよー!」
一礼して、自分の家の帰り道を歩く。今日は本当に濃ゆい一日だったなぁ……。
数時間前までいた、熱気溢れる体育館を思い出す。危ない面は沢山あった。声が枯れるほど応援した。少しだけだけど、試合にも出させてもらうことができた。なにより、
ーーー優勝、することができた。
最初は、ただ好きな子のために入った部活だった。だから、特に思い入れもなかったし、これからも特別ということにはならないんだろうなと思ってた。それが、いつの間にか、自分でも馬鹿みたいにハマってて、吃驚した。桐皇に負けたとき、あのときは悔しかった。ただ、見てるだけだった。無慈悲に入れられる点数を眺めているだけで、悔しかった。試合のあと、家に帰って馬鹿みたいに泣いたのを覚えている。
ジッと自分の手を見る。まだ、少し震えているその手をギュッと握り締める。
「……、勝ったんだよなあ」
ーーおれたちが、勝ったんだよな。
知らず、頬が緩む。現実味のない、その事実を噛み締めていた。
ーーーだからだろうか。気を抜いていたから、背後から迫る危険にも気づくことができなかった。
ドンッ、と後ろから強い衝撃が走る。次の瞬間、とてつもない痛みが身体を走り抜けた。
ゆっくりと、そこに手を当てる。ヌメリと生暖かいモノが手についた。
ーーー、血だ。
「ッぁ、な、…に」
身体がいうことをきかず、崩れ落ちる。誰かが走り去る音が聞こえた。おれは、死んでしまうのだろうか。
……、いやだ。いやだいやだいやだいやだ嫌だッ!!!死にたくないッ!!まだ、やりたいことが沢山あるのに!IHだってこれからなのにッ!なんで……。
ポケットから、携帯のバイブが伝わる。僅かに動く手で必死にそれを掴み、耳に当てる。
「あ、もしもしフリ?俺だ、日向だけど。明日の練習なんだがな、あれ」
「せ、んぱッ……、たすけてッ」
「…おい、降旗どうした、何があった」
「ゃだ、おれしにたくないのにッ」
「おい!何があったんだ!降旗!」
「……ま、だ。みんなといっしょに、いたいのに……」
「……もしもし?もしもしッ!?…おい、聞こえてるか⁈降旗?おいッ!!」
少しづつ、意識が混濁していくのがわかる。もう、ダメなのかもな。最後まで皆に迷惑掛けっぱなしだ…。
叶うなら、もう一度……。
ーーー続いて入った速報です。今日未明、◯◯市××町で、通り魔殺人事件が起こりました。犯人は、未だ逃走中。なお、被害者は、都内の高校に通う男子高校生とのことです。
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