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03にしおりをはさみました!
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03
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「新しい玩具ですって」「毛色の変わった」「ご執心とのこと」「でもしんだように目を覚まさないとか」
栄養は点滴だが、その他の呼吸や排泄は正常に作動しているらしい。
しかし、昏々と睡り続ける彼は、目を醒まさなかった。
脳波も異常でないのに、昏睡したまま、まさにしんだように。
「眠り姫みたいだね…」
「お前正気か?とうとう脳みそにウジが沸いたのか?」
完全介護、しかし必要最小限の管に繋がれている男を見に、彼は毎日その部屋を訪れていた。
「ひどいなぁ…」
規則的正しい心電図を見遣りながら、彼は医者に目も向けずに呟いた。
本当だったら、ずっとずっとここで見ていたいのだ。
「それにしても、その莫迦みたいに長い髪、切ってもいいか?」
看護士も困っていたし、検査に邪魔なんだよ、と言い募る医者にダメ!と子供のように叫んだ。
「ダメだよ!!ボクはこのままの彼を見たいんだ!」
検査にも清拭の邪魔にもなる、その長いくろかみを切ったほうがいいのはわかっている。
なおかつ、既に男は彼のモノなのだ。
彼の玩具にはおそらく何の権利も認められない。髪を切ろうが手足を落とそうが、男は彼の生きた玩具なのだ。誰にも咎められまい。
しかし、彼はそれをするのをためらっていた。
一度は看護士が苦労してその髪を洗うのを眺めていたこともある。
だいたいなんで、男の髪が長いのだ。
いや、男性の髪が長い文化もいくらでもある。でも、大概において、編まれたり結われたりしているものだ。
男の貌と人種、そして身につけていたスーツも、そのような文化には該当しない。
あるいは、自分のような女役を担当する人間なのかもしれない。
ベッドを覆い尽くす髪を眺めながら思考に耽る。
「…そろそろ検査だぞ」
口の悪い医者だが、その手腕は折り紙つきだ。闇医者とも、一国の総帥を手術したとも噂される。
彼はしかし、その医者と話が出来るのを心待ちにしていた。
また来るね、目を覚ましたら、1番に教えてね、約束だよ、そう言い置いて部屋を出た。
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部屋を出ると、下男が擦り寄って来て、次の伽を言い付けた。
ため息をつき、身を清めるために湯殿へ向かう。
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彼は高級娼館に在籍する男娼だった。
限界まで脂を搾った細身の身体、ゆるくウェーブした色素の薄い髪、物憂げな不思議な瞳のいろ、すべてが欲の対象となった。
気まぐれにしか客を取らず、むしろ彼を一晩でも所有することは成功の証とされるくらいの高級男娼。
うつくしい外見だけではなく、一度買った人間は必ず二度訪れると言われるほどの名器とされ、予定は何年か先まで埋まってると言われる。
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次の予定はかなり先だったような気がするが、また誰かが金を積んだのだろう。
機嫌がワルい時は伽を蹴り飛ばすこともあるが、お気に入りの玩具が出来て、気分もよい彼は承諾して予約の部屋に向かうのだった。
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その部屋にいたのは小肥りの身体を、神経質に揺すらせている男だった。
男娼といっても、彼を買う人間の大半は男だった。
気持ちのワルいほどにやけて、早急にベッドに押し倒され、むしゃぶりつかれ、喘がされた。ろくに前戯も施されず、挿入され続けて何回も何回も吐精された。
彼がいかにうつくしいか、どれだけ順番を待ち侘びたか、いかに具合がよいのか粗い息のしたで散々言葉を連ねられたが、律動に息を逃すので精一杯でまともに反応も返せない。
男も自らの欲を解き放つのに必死で、そんな彼に注意を払うこともしない。
所詮はただの性欲処理の生きた玩具なのだ。見た目の綺麗な、ただのツマラナイ玩具。
大きないびきをかいて彼を組み敷いたまま眠りに落ちる男のしたから這い出し、その太鼓腹にうすものを掛けてやり、内線を呼び出して飲み物を持って来て貰う。
しつらえられたシャワーで男の体液を洗い流し、中に出されたモノの処理をする。
汗をかいた分の水分を補給し、ようやく訪れた眠気に意識を溶けさせる。
…あの彼は、夢を見ているのだろうか。それとも真っ暗な無意識の中をたゆたっているのだろうか。
あのまなざしをもう一度見てみたい。見られますように。願いながら意識を手放した。
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