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第二話 開花(五)にしおりをはさみました!
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第二話 開花(五)
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呼ばれて慌てて駆け寄り膝を付くと、するりと手を伸ばして来たのは立珂ではなく天藍だ。つつっと耳たぶをなぞられて、ぞわりとして身を引いてしまう。
「な、何?」
「耳飾り。ん? 怪我してるぞ」
「あ、ああ、人間に撃たれたんだ。もう治ってる。じゃなくて、何これ」
「耳飾りだって。立珂と揃いだ」
天藍の手には金色の耳飾りが握られている。慣れた手つきでそれを耳に付けてくれたが、立珂がにゅっと顔を覗き込んでくる。
「おそろい! おそろいだよ薄珂! くれるって!」
「え? こんな高そうなのを?」
「安物だよ。怖がらせた詫びに貰ってくれ」
「でも」
物を貰いなれていない薄珂は素直に受け取って良いかどうか分からず、孔雀の顔を見るがにこりと微笑み頷いてくれた。構わないということだろう。それに立珂はまんまるのほっぺをさらに丸くして、にっこりと太陽のような微笑みだ。それだけで『いらない』と言う選択肢は消滅した。
「有難う。さっきは叩いてごめん。立珂のことになると駄目なんだ、俺」
「いいや、俺も不躾だった。それに攻撃は最大の防御だ。間違ってない。けどこれは覚えとけ」
とんっと喉元を突つかれた。見えている表情は笑顔だが、何かが突き刺さるような鋭さを感じて背筋が伸びる。
「殺られる前に殺れば確実に守れる。だがそれは全人類滅ぼすまで終わらない。殺る前に信頼できる相手かどうか見極めろ」
言われた言葉が何なのかすぐには理解できず、ぱちぱちと瞬きを繰り返した。天藍はくすりと笑みを浮かべ、薄珂の頬を撫でた。その手は金剛ほど大きくない。けれど温かく包み込んでくれる手は孔雀とも似ている。
「味方を増やせ。そうすれば弟を守る手段も増える」
「……うん」
薄珂は流されるがままに頷くと、天藍はぽんっと軽く肩を叩いてくれた。天藍と孔雀は食事時にお邪魔しました、と言って帰って行った。
診療所にいるのだから当然のことだけれど、薄珂はそれを妙に寂しく感じていた。
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