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2.過ちにしおりをはさみました!
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2.過ち
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稜に彼女がいることは初めから知っていた。大学のミスターとミスコンに選ばれたほどの美男美女の二人なのだから、有名なカップルだった。
稜とは最初はただの友達だった。それなのに「家に帰るの面倒くせぇ」と稜が健人の部屋に入り浸るようになり、そのうちに二人の間に不穏な空気が流れ始めた。
「な、健人。お前にキスさせろよ」
酔った勢いなのか、稜が急に抱きついてきて、健人に迫る。
「ふざけんなっ、嫌に決まってんだろっ」
抵抗したが、稜は無理矢理に健人のキスを奪った。
「何すんだ! ぶっ殺すぞ!」
最悪の男だと思った。
「健人。お前俺のこと好きだろ?」
見透かしたような顔で稜に言われてドッドッと鼓動が急に高鳴った。
なんで。
なんで、俺の気持ちがこいつにバレてるんだ……?
稜には彼女がいる。稜は友達だと自分に言い聞かせてずっと心の深海に閉じ込めていた想い。
それが、なぜ……?
「驚きすぎだろ。俺が気付かないとでも思ってたのか?」
ああ、最悪だと目の前が真っ暗になる。
「お前、わかりやす過ぎなんだよ。いつも俺を熱っぽい目で見やがって」
そうだったのか……。バカだな、俺。
「でも、安心しろ」
稜は驚きのあまりに無防備になっていた健人を抱き寄せる。
「俺もお前が好きだから」
そして健人に再びキスをした。
好きな人に好きと言われて、キスをされ、今は艶っぽく身体を弄られている。
こんなのダメだ。稜にはちゃんとした彼女がいる。わかっているのにどうして稜をはね退けることが出来ないのだろう。
そうだ。酔ってるせいだ。
酒に酔ってまともな判断ができなくなったんだ。
「健人。お前とずっとこうしたかった」
稜の悪魔の囁き。
「好きだ。大好きだ——」
稜の嘘かも本当かもわからない言葉。
稜の言葉。稜の手。稜の温もり。稜の強い視線に絡め取られ、健人は稜を受け入れてしまった。
◆◆◆
思えばあれが最大の過ちだったんだな——。
一度そういう関係になった後は、稜と健人はなし崩し的にセフレのような関係にもつれこんでしまった。
いつ稜の彼女にバレるのかヒヤヒヤしながらも、全くバレることもなくここまで来てしまった。
健人の部屋で朝まで過ごした後、稜は「今日はこれから美咲《みさき》と会ってくる。なんか俺に紹介したい人がいるんだと」と言って彼女である美咲に会いにいく。
一体どういう神経でそんなことができるのか、と同じ穴のムジナのくせに健人は思っていたが、責めたらきっと稜はもう健人に会ってくれなくなるのではないかと何も言えずにいた。
そんな不毛な関係も今日で終わりだ。
もちろん美咲に悪いという気持ちもある。
そして健人自身がもうこんな関係に耐えられなくなっていた。
健人は本気で稜を好きだった。
身体の関係だけじゃ心は満たされない。
寂しい、愛して欲しいと思いながらも口に出せないことに鬱々としていた。
その全てを投げ出して、自由になりたかった。
これ以上稜とこんな関係を続けてはいけない。覚悟が鈍らないように、新しい引っ越し先は稜には教えない。大学四年の秋になり、最近は大学に行く回数も減っている。このまま卒業してしまえばいい——。
合鍵を使って入ったら、がらんどうになっている部屋。それを見た稜はどう思うだろうか。
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