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ただ単に生存確認がしたかった…にしおりをはさみました!
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ただ単に生存確認がしたかった…
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平日の昼下がり、逸郎はこの街にある動物園に来ていた。
なんとなく一人で来るのが怖かったから、一度冗談半分に英介を誘ってみた。
だが、その時握った手が、妙に暖かかったから、英介と行くことの方が怖くなった。
最近は、必死になって入った大学へも殆ど行っていない。
もう辞めてしまってもいい様な気がしている。
何がしたいのか、自分でもよくわからなくなって、気がつくと動物園に来ていた。
そして、母に待っててと言われた場所に立っている。
—もっと傷付くかと思っていた
感想はこれだけだった。
ここへ来れば、何かを感じ、トラウマとやらを引っ張り出され、動揺して泣き出す自分さえ想像したが、なんてことはない。
意外とあっさりとその場所に辿り着き、意外とあっさりと自分の気持ちを受け止めている。
途中、手を繋いだ母子の姿を見ても、不思議となにも感じなかった。
この動物園に象はまだいない。
代わりにその檻には変な模様の馬が入れられて居た。
もしかしたら、そのお陰でダメージを軽減されているのかも知れないが、それはそれで、なんだか複雑だった。
「アホらし…帰ろ…」
そう口の中で呟いて、踵を返した時、ふと、ルカの顔が浮かんだ。
思わず足が止まる。
—なんで今?
あの馬に顔が似てるからか?
と、心の中で冗談を言いながら、馬をもう一度見てみたが、似てもいなけりゃ、大して面白くもない。
なんでルカを思い出したのか—
その答えは、もうわかっていたし、ルカの事をこれ以上思いたくなかったから、この場に足を運んだのも自覚していた。
その原因はあの日——
感情の箍が外れたあの日、英介が放った言葉のせいだ。
「イッちゃんはホモなの?」
そこには、悪気はないし、差別的な意味合いもない。
ただ、純粋にそう思ったから聞いただけだろう。
だから素直に「そうだ」と答えた。
その後も何か色々と聞きたそうな顔をしている英介を「お前は違う。だからこっちに来るな」と突き放した。
散々、翻弄しておいて勝手な言い草だとは思う。
でも、本心からそう思うのだ。
そして逸郎自身も、別に母親—つまり女に捨てられたから、そうなったわけではない。
理由としては、それももしかしたらあるのかも知れないが、本人はその時にそれが一番手っ取り早かったからそうなったと思うことにしている。
そして、そこから逸郎を戻れなくしたのは間違いなくルカだった。
——ルカが恋しい…
離れてから初めてそう感じた。
いや、正確にはルカとのセックスが恋しい。
ルカが居なくなってから暫くは、必死に勉強した。
だけど、それも結局は長続きしない。
そんなに必死にならなくても、出来てしまうから——
ただ単に生存確認がしたかった…
勘違いだとしても、自分に対し、熱を上げているその瞳をみていると、心が凍って行く様な気がした。
そして、いつの間にか、死んでいるんじゃないかと思ってしまう。
なんでもいい—
自分が生きているのか確かめたい……
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