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「祐希、アイスたべる?」
「あんの? いる」
祐希はおれに、少しだけ子どもの頃の話をしてくれた。
他の人たちはどんな子ども時代を過ごしたのか、少し気になった。
「俺……両親は結構ふつうで、しつこく干渉もしないしやりたいことは勝手にやらせてくれた。特別褒められて育ったわけでもないけど、割と愛されてきた方だと思う」
「……そっか」
「妹がいんだけど、2人とも妹にベッタリで俺は放置ってのが多かったから、ガキの頃は妹とよくケンカしてたな」
「ゆーき……お兄さんっぽい。やさしいし」
「俺は物心ついた時から感受性が強くて感情移入しやすいんだ。それがうざくて何回も人間関係を断ち切ろうとした」
「え?」
「疲れんだよ。こういう性格」
「……でも、周りのみんなはそんな祐希が好きだと思う」
自分の口からでた言葉に驚いた。
祐希はやさしい、誰にでも。
だからおれも救われたんだ。
祐希を嫌う人なんて、きっとほとんどいない。
「どうだろうな。八方美人だよ」
「おれみたいな、のにも……やさしい。祐希は、いい人」
「みたいなのって、やめろよ。陽は人を惹きつけるだけの魅力がある……だから俺も」
「?」
「なんでもない。とにかく、"こんなの"なんて言うな。お前を守れるのはお前だけだろ」
「……う、ん」
自分を守る。
それさえ、どうすればいいかわからない。
ただ人を避けて逆らわずに、相手の機嫌をうかがって生きてきた。
守り方なんて、わからないよ。
「ゆ、うきは……」
「なに?」
「…………ううん、やっぱりなんでもない」
「……」
思わないでと言われても、おれなんかが祐希の隣にいていいとは思えない。
だって祐希はなんでもできる。
運動も学年トップクラスで、成績は毎年貼り出される上位3位のなかに必ずいる。
それに男前でかっこよくて常に女子生徒のうわさの的だ。
でもおれは……
「おれ、なんかが……」
「またでた、それ。陽はすげーじゃん。事務所の前にでかい額縁で飾ってある写真知ってるよな?」
「…………おれが、写真コンテストで、だしたやつ」
「そう。優秀賞に選ばれたやつの作品を飾ってある。生徒会の友人に生徒全員の作品見せてもらったけど、素人の俺が見ても陽の撮った写真が一番目を惹かれた」
「……」
「好きなんだよ、陽の写真。お前のことを知る前から」
「お、れは、2年生のときから……知ってた。祐希のことも、要くんのことも」
「え?」
夢だった友だちと露天風呂に入ること。
だけど祐希といっしょに入ると思ったら、急に恥ずかしくなってきた。
服を脱ぎながらこのまま逃げてしまいたいと思った。
「祐希は……人気者。みんなから好かれて、いつも前向きで、やさしくて、キラキラしてて」
「おいおいおい、誰の話してんだお前は」
「え……祐希、のこと」
シャツを脱いだ祐希の割れた腹筋に目がいってドキッとしてしまった。
やっぱり、鍛えてるんだ……かっこいい。
「そんなキラキラしてない」
「でも……祐希のいい噂いっぱい聞く」
「陽のピュアセンサーが働きすぎなんじゃね?」
「ピュアセンサー?」
「まず前向きじゃねえし」
「前向きだよ。おれのこと、いつも励ましてくれる」
「それは単に陽がネガティブすぎるっつーか……まぁ、責めらんねえけど」
「クラスの女子が、祐希と付き合いたいって……言ってた。昨日も」
「絶対俺が知らないやつだろ。仲いい女子は全員彼氏持ちだし」
仲いい女子……
祐希は、彼女いるのかな。
こんなにかっこいい人にいないはずはない。
「……ゆーき、は……その」
「ん?」
「か、のじょ……いるの?」
「いない」
「へ?」
「いないよ。中学まではいたけど」
「え……3年も、いないの? 祐希なのに」
さっきも見られたのに、アザのある体をさらすのは恥ずかしい。
隠したい気持ちをなんとか抑えながら浴槽に足を入れる。
「俺なのにってなんだ。コクられてもぜんぶ振ってるし」
「なんで……」
「好きじゃないから」
「……」
「好きなやつと付き合いたい。それだけ」
好きなやつ……
祐希は、どんな女の人が好きなんだろう。
そう思ったとき、胸がズキっと痛くなった。
その理由はわからない。
どうして。
「どんな、人が……好きなの」
「わっかんねー。陽は?」
「お、れは…………かっこ、いい人……とか」
って、なにを言ってるんだろう。
自分でいって恥ずかしくなってきた。
温かいお湯のせいにしてしまいたいくらい顔が熱くなる。
「かっこいい、?」
「あ、ちがっ……いや、ちがわない、けど。やっぱり、なし」
「はは、顔あっか。恥ずかしがりすぎだろ」
「っ……! ご、ごめんなさい」
「謝るなよ。なんも悪いことしてないんだから」
どうして、かっこいい人なんて。
祐希を見てとっさに出てきた。
いやだ、わからない感情はこわい。
「具体的にどういうかっこいいが好きなん」
「うぇっ、? そ、れは……」
「あるじゃん。顔がかっこいいとか勉強できてかっこいいとか」
「…………ぜ、ぜん、ぶ」
「は? スパダリすぎんだろ、それは。存在しないって」
「い、いる!」
「……陽、意外とロマンチストか?」
「え、や、ちが」
いる、のに。
おれの憧れの人が。
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