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現実 (自慰)にしおりをはさみました!
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現実 (自慰)
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pink motor poolはギター&ボーカルの木田悠とベースの前島弘介からなるロックデュオである。そのマネージャーである櫻井永徳は今、客席の位置からリハーサルを行う2人を見上げていた。
ツアーを回るサポートドラマーは、どうにか良い相手が見つかった。そこそこのベテランで2人も最初は委縮していたが、演奏しているときの空気は悪くないし、酒も2人のペースに追いつける。
東京から始まり、全国小さな都市も練り歩いてもう一度東京に戻る、その長丁場のツアーの中で、2人のバランスを櫻井とともに支えてくれることが期待できそうだ。
最後に黒宮の部屋を出て以来、彼らと連絡は一度も取っていない。合う機会も事務所で出会ったときの挨拶程度だ。
事務所の中での上下関係はあるため、いつも櫻井の方から身を固くさせながら挨拶していたが、仕事中の武上はあの態度だし、黒宮も顔は知ってる程度といったくらいの他人行儀で手を上げるだけ。
表面上、すべては無かったことのようになっていた。
しかし、櫻井にとって決定的に変わってしまったことがある。
この長い全国ツアー、櫻井は1つ大きな不安を抱えていた。
「ホテルがなぁ……」
櫻井の独り言を、近くにいたスタッフが耳聡く拾ってこちらを向いてきた。
「東京からの人たち、みんな相部屋なんですって?休んだ気しないでしょ」
「あぁ……ずっとではないけど、たまにね」
全国を共にするわけではない地元のイベンターは「大変っすね」とヘラヘラ笑った。櫻井も合わせて笑ったが、まったく笑える話ではなかった。
予算の面に関してもだが、櫻井にとって一番深刻なのはそこではない。このイベンターは、櫻井がどれだけ大変な思いをしてツアーのライブ外の日程を乗り切っているか、知らないだろう。
木田と前島には必ずシングルを用意するよう、櫻井が采配を振るった。
贅沢ではあるが、濃密な2時間の共演を何度も重ねる2人のプライバシーは確保しておいて、ツアー中の無駄なストレスは軽減させてやりたい。
櫻井をはじめとする同行スタッフはしばしば相部屋で宿泊することもあったが、毎回というわけではない。この日、櫻井は久々の1人部屋に当てられていた。
打ち上げは木田が潰れたのに合わせて比較的はやく切り上げられた。となれば、木田を部屋まで抱えていくのも櫻井の役目だ。
気絶しかけているような木田を肩に抱えて、櫻井はエレベーターランプが移り変わるのを眺めていた。頭の中は、今こうして自分に支えられている飲んだくれが、舞台の上で雄叫びのような声で歌っている場面を繰り返している。
ステージ上ではアレだけの力があるというのに……だからこそだろうか、これほどまでに私生活が情けないのは。
「ほら、あとちょっと頑張って歩け」
「ん~~……おぉ…………」
崩れそうな木田を支えてどうにか歩かせて、酒が入る前に木田から預かっていた鍵をポケットから取り出した。
扉を開けて、まっすぐベッドに向かって木田を下ろす。
靴と靴下、上着を脱がせて、布団を被せ、櫻井がジャケットをハンガーにかけている間に、既に木田は夢の中だ。
良い身分だと笑いながらも、櫻井は早々に部屋を出て、隣にある自室に向かった。
一仕事終えた彼の身体は、既に欲望が膨らみ始めていた。
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