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だめになるにしおりをはさみました!
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だめになる
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作業室の机に積み重ねられた陶器を手にとり、魔法陣に魔力を込めていく。前はどんなに頑張っても一日一個しか作れなかった商品は、今では一日で三個程度作ることができている。ラズから一時的にもらう魔力以上に、力が満ちていると感じる。
(悪魔に魔力を注がれると、魔力量が増えるって本当だったんだ)
チラリとラズを見上げる。肉厚でセクシーな唇に、つい目が吸い寄せられてしまう。彼は視線に気づいて魅惑的に笑った。
「どうした、そろそろ魔力が必要か?」
「ち、違うよ。その……」
見惚れていたなんて言いたくない。別で気になっていることについて相談した。
「ラズが悪魔だって、師匠に気づかれてると思う?」
ラズとは町で出会って意気投合し、友人になったから一緒に住みたいんだと師匠に力説した。怪しいヤツだと思われているのは間違いないが、もし禁断魔法を使ったとバレたらどうしよう。
死ぬのは怖くない。けれど、師匠に失望されるかもしれないと考えただけで、目の前が暗くなってくる。
「心配してる暇があったら手元に集中しろ。注入速度が落ちてるぞ」
「これで精一杯なんだってば……っん!」
顎を捉えられてキスをされる。背中から腰にかけて、痺れるように体が熱くなった。慌てて首を振り、いたずらな舌から逃れる。
「や、まだ魔力を使い切ってないから!」
「別にいいだろ。お前にキスするの、好きなんだ」
「……っ!」
今すぐに部屋を飛び出したくなった。けれど魔法の注入をやめてしまえば最初からやり直しになってしまう。熱を帯びた頬を伏せて、ラズから視線を逸らした。
ラズは勝手にサーシェのフードをおろして髪を撫ではじめる。宝物を愛でるかのように触られて、すり寄ってしまいたくなった。
(だめ。だめになる)
好かれていると勘違いしてはいけない。ラズはサーシェの願いを叶えてくれる取引相手だ。いつかサーシェから代償を奪って去っていくのだから、甘えたりしちゃいけない。
「髪もいいよな、ツヤツヤで手触りがいい」
「だったら差し上げます」
「そういうことじゃないんだよなあ。サーシェの頭にくっついてるからいいんだよ」
いっそ剃ってしまった方がいいかもしれない。母と同じ黄緑色の髪を、サーシェなんかが受け継いでしまって申し訳ない。町の人たちから期待されたって、惨めさが募るだけだと唇を噛み締めた。
「そんな辛気臭い顔するなよ」
「どうせ僕は、頑張ったって両親や師匠のようになれません」
「別に同じようになる必要なんてないだろう。今だって、お前なりに頑張ってる。それでよくないか?」
全然よくない。そう思うのに、あっけらかんとした声音に許しを請いたくなる。こんな弱い自分を認めていいはずないのに、ラズと一緒にいると訳がわからなくなる。
返事を返せないまま、魔力を込めることに集中した。
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