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救世主の彼。にしおりをはさみました!
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救世主の彼。
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二人で肩を並べて夜道を歩く。
月の光に照らされた金髪が暗がりの中やけにキレイだった。
あの後、公園の出入り口でやっぱり大丈夫だと言ってみたけど、なんだかんだ送ってもらうことになった。
特に会話があるわけでもなく、金髪の男はあんまり気にしてないようだけど何と無く居心地が悪かった。
ぶっちゃけた話不良という人種は少し苦手だ。
でもこの金髪の男はどういうわけか怖くない。
救世主だからというのもあるけどすごく表情が優しいんだ。
ほんと見た目は金髪にピアスだし見るからに不良なんだけど。
不思議だ。
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
「・・・あ、あのっ」
とうとう沈黙に耐えられなくなった俺は口を開いた。
歩く足はそのままに男はどうしたって視線だけをこちらに流した。
何となく緊張してしまって少し手のひらが汗ばんだ。
「え、と、あの、」
話しかけたはいいけど、実は特に何を話そうとか考えていなかった俺はどうしようと視線を彷徨わせる。
そんな俺に男はふっと口元を緩ませた。
「…名前、なに?」
「も、森川稜太です。あ、あの、」
じっと男に視線を向ければその視線に応えるように柔らかく緩められる目元。
「イチヤ。よろしくな、稜太」
そう言って笑ったイチヤさんの表情があんまりにもかっこよくて。
相手は男なのに。
なのに、一気に熱が上がったみたいに顔が熱くなって、しかも心臓は馬鹿みたいにものすごい速度で脈打っていた。
「稜太?どうした?」
「!!!い、いいいいえ!な、何でもないですっ!!!」
立ち止まった俺を不思議そうにのぞき込む視線とかち合う。
さらにカーッと頭に血が上るのがわかる。心臓が一瞬破裂するかと思った。
ち、近い、近すぎます!!!
直視できなくて思いっきり顔を逸らした。
ドッドッドッと激しく脈打つ心臓を宥めつつ、少し失礼だったかもしれないとチラリとイチヤさんを見れば、相変わらず腰を少し折って俺をのぞき込んでいた。
「・・・・よ、よろしくお願いしま、す」
イチヤさんと地面を交互に見やりながらボソボソと呟けば、イチヤさんはまた俺の髪をクシャリと乱して。
おうって言って今日一番の輝かんばかりの笑顔を俺にくれた。
それからは、変な緊張感はなくなって(謎の動悸と顔の熱さは無くならないけど)何だかすごく楽しかった。
好きな曲とか、好きな食べ物とか、普段何してるかとか、そんな他愛もない話ばかりだけれど。
ほとんどが俺から振った話題だけどイチヤさんは嫌な顔なんかしないで付き合ってくれてた。
そしたらあっという間に家の近くまで来てて。
何だか残念に感じてる自分がいた。
「イチヤさん、ここまでで大丈夫ですよ。家見えてきたんで」
ほんとはもう少し話してみたかったという意味不明な思考がよぎったけど。
何かおかしいだろって気付かなかったふり。
「あー、そっか、・・・残念だな」
「え、」
思ってもなかった言葉にイチヤさんを凝視すれば、苦笑する姿に何と無くだけど嘘はついてないような気がした。
「楽しかったから。お前と話すの」
イチヤさんの口から紡がれる意外過ぎる言葉に少し治まりつつあった謎の動悸がまた激しくなっていく。
ああ、ほんとにどうしたんだろう俺の身体は。
「あ、あの、俺も楽しかったですっ!それと、ほんとにありがとうございましたっ」
熱い顔を隠すように深々~っと頭を下げれば、イチヤさんは笑って俺の頭をよしよしと撫でた。
イチヤさんの手はそのままに頭を上げれば、更にワシャワシャとされた。
「あ~、ほんっとかわいいわお前」
「な、か、かわ・・・!?」
「じゃ、気をつけて帰れよ」
狼狽える俺をそのままに、最後に頭をぽんぽんしてその手は離れていった。
「あ、ありがとうございましたっ」
少しずつ離れてくその背中にもう一度お礼の言葉を投げかけると、イチヤさんは少しだけ振り向いてヒラヒラと手を振ってくれた。
暗がりに消えてく金髪に月の光が反射してキレイだなって思った。
イチヤさんはもうこっちは見てなかったけど、その金色が見えなくなるまで見送った。
一人で後ちょっとの道のりを歩き出す。
自然と頭に浮かぶのはイチヤさん。
何だろうな。
この変な動悸と顔の熱さと。
胸のあたりがちょっとキュってなって、痛いような、でも幸せなような、この感じ。
「ただいまー」
いつもより遅い時間の帰宅にかける声は自然と小さくなる。
でもやっぱり不思議だ。
足取りは軽くて、ツノを生やして待ち構える母も全くもって気にならなかった。(うん、もちろん説教くらいました)
この意味不明な症状の正体が何なのか。
気付くのは、もうちょっと後の話。
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