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突然の訪問者にしおりをはさみました!
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突然の訪問者
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「つ、つかれた……」
自室に駆け込んだ勢いのまま突っ伏すようにベッドに倒れ込んだ。
テンションが高過ぎる妹に解放されたのはついさっきのこと。
今の俺の状態はまさに瀕死。
ほんの数分のことなのに尋常じゃないほどに俺のHPは削られていた。
今ちょっとでも攻撃を受けようものならあっという間にやられてしまうに違いない。
でっかい溜め息を吐きながら、さっきの状況を思い返して更に溜め息。
何が楽しいのか、嬉々として問い詰めてくる鈴花に本気でテンパり、今更ながらに男同士で付き合ってる兄に全く抵抗感を持ってない妹に本気でびびった。
まあ、結局は勘違いだとわかってくれたんだけど。
でも、妹に彼氏は変わってなくてうんたらかんたらと必死に説明する兄の図ってどうなのとちょっと凹みたくなった。
「……………あっメール」
突っ伏したままゔんゔん唸ること数秒。
大事なことを思い出してもそもそと仰向けになりながら、ポケットにしまいっぱなしだった携帯を引っ張り出す。
鈴花のことで悩む前にメールを送らなければ。
もちろん送る相手は壱也さん。
忙しいだろうけど、帰り着いたし一応連絡くらいはしとかないと。
『無事に送っていただきました』っと。
メールを送信したところで、一つ大きな伸びをしてとりあえず洗濯物を洗濯機に放り込もうと部屋を出た。
もちろん、鈴花に気付かれないようにこっそりと。
また捕まったら今度こそHPが消える。
しずーかにドアを閉めて、一段一段そーっと階段を降りて行く。
最後の一段に差し掛かったと同時、
「……ッ!!!」
突然鳴り響いたチャイムの音に盛大に肩が跳ね上がった。
息を潜めていただけに余計にびびった。
心臓もうるさいくらいバクバク言ってる。
更に追い討ちをかけるようにリビングから聞こえる呆れたような鈴花の声。
「稜兄出てね~」
「わ、わかってるよ…!」
ば、ばれてた……
気付いてないと思ってたのに…!
なんて言うか、無駄に悔しい気持ちになるよね!
くそぉっ、と一人地団駄を踏んでいれば、痺れを切らしたのか再びピンポンとチャイムが鳴る。
それに鈴花の催促する声も再び。
「わかってますって…」
うるさい心臓を宥めながら、しぶしぶと玄関に向かう。
うっかり洗濯物を抱えたまま。
「はーい、どちらさ、ま……」
ろくに確認もせずに開いた扉の向こう側の人物に俺の思考は止まる。
「…れ、ん」
「……よ、」
久しぶりに真正面から合わせた視線に頭の中が真っ白になった。
思いもよらない訪問者に、抱えた洗濯物の中からパンツが落ちたことにも気付かなかった。
「…な、なんか飲む…?」
「いや、いい…」
「…そ、そっか…」
「…………」
「…………」
「…………」
とりあえず部屋に上げたはいいけど、
ど、どどどどどうしようっめっちゃ気まずいんですけど……っ!!!
そわそわそわそわ、自分の部屋なのに全くちっとも落ち着かない。
蓮は蓮でこっち見ないし、ちょっと顔怖いし。
ほんとにめちゃくちゃ空気が重いです。
久々に俺の部屋にいる幼馴染みに嬉しいような、複雑なような、
何とも言えない感情がぐるぐるぐるぐる回ってる。
以前と同じ定位置に座ってる蓮を見て、何だか泣きそうになった。
何て話しかけたらいいのかわからない。
むしろ話しかけていいのかさえもわからない。
今現在の俺らの状況は未だかつてないくらい最悪に険悪だった。
蓮からはずっと避けられてたし、絶対に許す気もなさそうだった。
そんな状態だったのにこの突然の訪問。
一体どうしたんだろう。
何かあったのか。
不意にあの日の蓮がフラッシュバックした。
怒ってる、でも泣きそうな顔をした蓮。
…まさか絶交とか絶縁宣言をしに来たとかじゃない、よな?
そんなの嫌だ。
俺のワガママだってわかってるけど、そんなの絶対に嫌だ。
「…蓮っ、あのっ…」
「ごめんっ!!!」
意を決して発した俺の声に蓮の声が重なった。
「……え、」
「ほんとにごめん…」
いきなりのことに反応出来ないでいると蓮がこっちに向き直って、再び謝罪の言葉を口にした。
しかも、頭まで下げられて余計に困惑してしまう。
蓮の表情は見えない。
それって何のごめんなんだろう。
これからは友達できませんって、そういう意味?
「れ、蓮…?」
震える声で蓮を呼ぶ。
どうしよう、すごく怖い。
ねえ、俺どうしたらいい?
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