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頭冷やさないと(拓斗)にしおりをはさみました!
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頭冷やさないと(拓斗)
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わかってる。事故だってことくらい、わかってる。
薫は熱があって、朦朧としてて、自惚れているわけじゃないけど、きっと俺にキスをしようとしてくれたんだ。
きっとそうだ。絶対そうだ。山木にキスなんてするわけない。そんなのわかってる。
わかってるよ。だけど、だけどあんな目の前で、山木の腕引っ張ってキスするなんて。
あんな、薫からしたキスを、見てしまうなんて…。
「…っ、くっそ……!」
薫は悪くない。山木も悪くない。誰も悪くないんだ…!
ただ、いくら事故でも目の前であんなとこ見ちゃったら、そりゃショックだし、正直かなりつらい…。
もっと、大人になれよって思うのに、できない自分がムカつく。
「おい!保坂!」
「っ、山木…」
俺のことを追いかけてきたのか、息を切らした山木が食堂の入り口に立っていた。
息を切らしてるって言っても、捜してはいないだろう。
だいたい行くところって、食堂くらいしかないし、他の階とか誰かの部屋に行くことはまずないし。
「さっきのは事故だって」
「っ、わかってる!」
思ったより大きな声が出て、はっと顔を上げると、山木が驚いたような顔をしていた。
「…悪い、大声出して。…でも、わかってるんだ…事故だってことくらい……」
逆に考えてしまえば嬉しいことなのに。
だってそうだろ?薫が自ら俺にキスをしようとしてくれたんだ。
そう思ったら、すごく嬉しいことなのに。
「…キスする前、お前のこと呼んでた。俺は保坂じゃねえって言ったんだけど、全然朦朧としててさ、なんも聞こえてないみたいで」
「………」
「悪い。避けらんなくて。俺が避けられてたら、お前も城田もこんな思いしなくて済んだのに」
眉間に皺を寄せて申し訳なさそう言う山木に、逆に申し訳なくなった。
俺のただの嫉妬のせいで、山木まで困らせて…。
「…山木は悪くないから。薫も悪くない。誰も悪くないから、謝らないでくれ…」
俺にはそれしか言えなかった。
自分にこんなにも独占欲があるなんて、初めて知った。
「…悪い、俺頭冷やさないと、薫んとこ戻れない。三浦の部屋に入れてもらう…」
「…城田にも言っておくか?」
「いや、自分で言うから、今は寝かせてやってくれ」
「…わかった。じゃあ、な」
山木が食堂を出て行ってからも、俺はしばらく一人食堂の中にいた。
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