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95にしおりをはさみました!
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95
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恭司の様子がおかしかったあの日から一ヶ月程経ち、凪は仕事にも恭司との暮らしにも大分慣れていた。
内線が鳴り、番号を確認すると階下の受付からで、受付から中津川様と言う方が来社されているが、アポが無いのでどうしたらよいかと問われた。
「専務、中津川様と仰る方が受付にお見えになられている様なのですが、如何なさいますか。」
アポ無しと言うことで、側にいた恭司に伺うと、「...第二会議室に御通しして。」と渋い顔をしながら言われる。普段の来客は商談ブースに通す事が殆んどだが、第二会議室に通すと言うことは、来客が重客であるということが窺い知れた。
受付にその旨を伝えると、凪は2階のカフェに電話をし、コーヒーを2つ第二会議室前まで頼む。
先に向かった恭司の後を追うように第二会議室に向かい、程無くして届いたコーヒーを手に、ノックをして中に入る。
「失礼致します、...っ!?」
凪は少し戸惑った。中津川と呼ばれた女性は、広々した第二会議室で、恭司の正面の席では無く真横を陣取り、その椅子も恭司の椅子に限りなく近い。
「......コーヒーをお持ち致しました。どうぞ。」
動揺してるも、何にも気にしてませんよ風を装い、恭しく頭を下げコーヒーを置くと、「ラテにして。」と言われ、一瞬分からなくてえ?って顔で見ちゃう。
「だから、ラテ。コーヒーじゃなくて、ラテに変えて頂戴。」
耀子に横柄な態度でそう言われ、来客に飲み物の変更頼まれるとか、初めてなんですけどと少し固まる凪に「...凪くん、申し訳ないがラテを1つ頼めるかな。」と恭司が付け足した。
ハッとして、申し訳御座いません、すぐお持ち致しますとコーヒーを下げようした時、ふと気がつく。
......この匂い、
耀子の香水の匂いを知っている気がしたが、取り敢えず今はそれどころじゃない。今度は直接カフェへ出向きラテを受け取ると、もう一度第二会議室に持っていく。
「御待たせして申し訳ございません。ラテで御座います。」
礼の一言も無い耀子に代わり、恭司が有難うと言ってくれる。そんな恭司にキュンキュンして微笑み、ちらと耀子を見てべっと内心舌を出すと失礼致しますと第二会議室を後にした。
凪は専務室に戻ってから先程の匂いの正体に気付いた。
...あの人の香水の匂いって、あの晩恭司さんからした香水の匂いと同じっぽいな。あの日恭司さんが一緒に居たのってあの人か?まっ、いっか。
少しの疑問を覚えたが、恭司はあの晩から以前にも増して凪を大切に慈しみ、ちゃんと愛されている事を凪も分かっていた。だから耀子の香水の匂いに、あの晩恭司が一緒に居たのは耀子かも知れないと思ったが、そんな事は別にどうでもいい。凪にとってはもう過去だ。
小一時間程経った頃、恭司は第二会議室から戻ってきた。
「これから外出して、今日はもう戻らないから。...多分、帰りは遅くなると思う。先に食事を済ませて、眠くなったら先に寝てなさい。起きて待ってなくていいからね、いいかな?」
「はい。でも、やっぱり起きて待ってます。」
髪を撫でてそう言ってきた恭司に、凪は微笑んで返した。やっぱりおかえりって出迎えたい。
「なるべく早く帰るね。」と言って出て行った恭司を見送り、凪は第二会議室にカップを下げに行く。耀子残り香と、カップに付いた口紅の跡を見て、少しの不安を覚えた。
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