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窺うにしおりをはさみました!
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窺う
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大学が始まり、やれ新歓コンパだの、オリエンテーションだのが一段落し、アキラとあーだこーだと言い合いながら組んだカリキュラム通りに講義を受ける、そんな新生活にようやく慣れてきた頃だった。
始まる前に爆弾を投下されたアキラとの同居生活だったが、俺が心配していたことは何も起こらなかった。夜になり自分の部屋に入ってから、アキラが来たらどうしようなど、眠れない日が続いたが、それも三日を過ぎるとそんな悩み事も忘れて、ぐっすりと眠るようになっていた。
今日は休日だ。アキラは出かけているようだし、掃除でもしようか、と軽く背伸びをしてベッドから起き上がり、まずは自分の部屋の掃除から始める。
*****
ふと、気がつくと辺りが薄暗くなっていた。時間を見れば、そろそろ夕飯の時間だ。俺の悪いクセだ。集中すると時間を忘れてしまう。食事を抜くこともざらだ。
「アキラ、夕飯どうするつもりかな」
独り言を言いつつ、冷蔵庫の中を確認する。食費、光熱費は折半している。家事の分担は特に決めていなかったが、外に出ることの少ない俺が担当することが自然に多くなっている。
アキラに夕飯の有無をメールで確認し、頭のなかで献立を考えながら、食費用の財布を手にスーパーに向かう。
食材を選んでいると、後ろから声をかけられた。
「奥さん、今日の晩ごはんは何ですか?」
ニヤけたこの甘い声の主は、振り返らなくてもわかる。
「アキラ、メールの返事くらいしろよ」
「ちょうど帰るとこだったし、ここに来てるだろうなって思って。荷物持ちに来たんだぜ、えらくねえ?」
悪びれず、言い訳どころか俺を丸め込もうとするいつものアキラの口調に、なんとなく嬉しく思う自分がいる。他の奴らといるアキラは、俺と同じく表面上は人当たりもよくいいヤツだ。こんな言い方をするアキラを知っているのは俺ぐらいだろう。
「今日は、豚の生姜焼きだよ。あー、でも荷物持ちにせっかく来てくれたんだから、米も買っておこうかなー」
わざとらしく言いながら、アキラを見ると、イタズラを考えてる子どものような表情で、「もちろん、お持ち致しますよ、奥さん」とのたまった。
*****
「旨かったよ、奥さん」
しつこく奥さん呼びするアキラを無視して、後片付けを始める。
食器を洗っていると、急にアキラが背後に立ち、後ろから腰に両腕を回してくる。
ドキッとして一瞬動きが止まるが、動揺していることを知られたくない一心で、何でもないことのように洗い物を続ける。
「アキラ、邪魔なんだけど」
素っ気ない口調で離れるよう促すが、アキラは離れず、むしろ力を込めてきた。まるですがり付くかのようなその様子にアキラの顔を窺おうとするが、俺の肩に顔を埋めてしまっていてそれも出来ず。
どうしようかと考えているうちに、洗い物が終わってしまう。
「終わった?」
アキラの問いかけに何故か声も出さずに頷いていた。
次の瞬間、背中から離れたアキラに腕を強く掴まれ、強引に引き摺られる。
いつもなら、その痛みに文句の一つでも言っているはずだが、またしても俺の声帯は機能せず、黙ってアキラの部屋まで引き摺られる。
どういう意味かはもうわかっていた。ただ、嫌悪や恐怖を感じず、緊張と僅かな期待を感じている自分がわからず、ただ黙ってアキラの促しに従い、アキラの部屋に入り、ベッドに近付くアキラを見つめていた。
「こっち、きて」
アキラの声に緊張が混ざっていると感じるのは、俺の願望だろうか。
震える足を感じながら、永遠とも思えるベッドまでの距離を進む。
自分の鼓動の大きさと速さに怯える。
「緊張、してるなぁ」
ベッドの前まで来て、立ち止まった俺に手を差し伸べ、ふっと、いつものニヤニヤ笑いではなく、柔らかく微笑むアキラに、鼓動が更に速くなる。
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