アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
酔うにしおりをはさみました!
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
- しおりがはさまれています
-
酔う
-
「喋りにくかったら、ゆっくりでいいよ。・・・とりあえず、せっかくワイン開けたんだし、飲もう。・・ね?」
しばらく無言で考え込んでいた俺の気分を和らげるように、教授が乾杯を誘ってきた。
誘われるままに、ちびりちびりとワインを飲み始める。いつの間に用意したのか、軽いつまみにナッツなども出されていて、摘まみつつワインを味わう。
これもきっと、俺なんかが飲むのもったいない高いワインなんだろうなぁ。
一口飲むと、フワッと口の中に甘いフルーツの香りが広がる。
ワインってこんな美味しいものなんだ。
口当たりの良さに、ついつい何度もグラスを傾けた。
「飲めそうだね」
教授の声に頷く。確かにこんなに酒が美味しいと思ったのは初めてかもしれない。
よく考えれば、またしても食事を抜いていた俺は、空腹で酒を飲んだらどうなるか、なんてことは知らず。
ワインもアキラと一緒に飲んだことが一度あるだけで、どのくらいアルコール度数があるのかも、もちろん知らない。
勧められるままにワインを飲み、あっという間に酔いが回り、どんどん口も軽くなってくる。
「先生ぇ、なんで、なんですかねぇ」
「何が、ですか?」
「どーして、アキラは、うわきするんですかねぇ・・・きのうまでね、もお、ぜったいにうわきしないって、ゆってたんですよー?・・・なのに、オンナとッ」
嗚咽で、上手く喋れなくなる。喋りたいのに。
でも、こんなことひとにしゃべってもいいのかなぁ・・・
でも、くるしいよぅ、たすけてほしいよぅ・・・
「全部、吐き出してしまいなさい。全部、聞いててあげますから」
あ、せんせえ、またけいごになってるぅ・・・めがねかけたりはずしたり、せんせえ、も、アキラといっしょだねえ、ころころかわるんだねえ・・・
アキラは、おれのこときらいになったのかなぁ・・・
アキラ、アキラ、アキラぁ
すきぃ、すきだよ・・・
「・・・君も、なんですね」
意識が途切れる前に、そう言って悲しそうな表情をした朝比奈教授の顔が目に写った気がしたが、意味を問うこともできず、そのまま闇に沈んでいった───。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
53 / 259