アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
ふりだしに戻るにしおりをはさみました!
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
- しおりがはさまれています
-
ふりだしに戻る
-
いやー、なんかね、もうあたしいらないみたいな雰囲気になってるよね?
事実、そうだよね
だって問題解決しちゃったんだもん
せっかく、どうやって二人の間を引っ掻き回しながら最終的にくっつけてやろうか考えてたのに
もっと菅野クンと親密な関係になって、逃げ場をなくして追い詰めて、汐音に迫らせてやろうと…菅野クンの受け姿が拝めるものだと…
また一から新たな関係を築き上げていかないといけないのかぁ 惜しかったのになぁ
汐音と菅野クンが入っていった資料室の扉にもたれ、伸ばした足を上下にパタパタと揺らす。
正直、かなりショックだ。こうも早く汐音に立ち直られるとは思ってなかったから。
…計算違いだったか? いや、判断を見誤っていたのか。予定を狂わせたのはきっと菅野クンだ。心のどこかで彼の単純さを見くびってたんだろう。
「んんー…悔しい」
盛大に広げられた両足を折りたたんで引き寄せた。膝と膝の窪みに顎を乗せて「うー」だの「んー」だの唸る。
あたしが最後に汐音に投げかけた一言で汐音は絶対に動く、って確信があった。
なにせ、花と動物にしか興味を示すことがなかった汐音が執着してるものだ。他人に横取りされるかもしれない危機に動かない筈がない。現に、汐音は菅野クンに近付いた。二人きりになるなら、汐音なら、校舎外よりもどこかの空き教室を利用すると思ったから一番可能性の高い資料室前にこうして張り込んでいたわけだ。
予想はドンピシャ。
途中まではあたしが思い描いていたシナリオ通りに話は進んだ。本当に途中までは。
それがこんなに平和的に解決してしまって……はぁ。
「今日は喧嘩別れで終わると思ってたんだけどなぁー…」
「へぇ、おもしろそうだね。
…誰と誰が?」
「……っ、」
突然上から降ってきた声に驚いて肩が跳ねる。反射的に声のした方を見上げると、そこには黒いオーラを放つ汐音が立っていた。笑ってはいるが、目が据わっている。
どうやら、自分の世界に入り過ぎていて扉が開く音さえも気づかなかったらしい。それほどまでにショックが大きかったのだと実感する。
「邪魔。どいて。とっとと失せな」
「いった、痛い痛い!」
この世のクズを見るような目で睨まれゲシゲシと足蹴にされた。
「あたし、仮にも女子なんだからね。汐音はそんないたいけな子にまで容赦ないのかなあ? 優しくない人はモテないよ?」
「なに言っても耳障りなだけなんだよ。それと、こんなのがいたいけな女の子だって言うなら世も末だね」
「いったあ!? もう、足型つくじゃん!」
自分の興味のないものに対してはとことんドライなんだから
嫌われてるのもあるんだろうけど…だとしたら相当だね
汐音から少し離れた後ろで複雑そうな顔をした菅野クンと目が合う。顔の前で小さく手を合わせ、謝罪のポーズをとっている。
……はは、利用しようとしたあたしに対して謝るなんて もっと怒ってもいいとこなのに
お人好しにもほどがあるよ、菅野クン
「…なにニヤけてんだよ」
「あ、いたっ」
なんだか拍子抜けしてしまって、その後も何度か汐音に蹴られたけれど不思議と少しも気にならなかった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
58 / 291