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いい事悪い事にしおりをはさみました!
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いい事悪い事
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ガタゴトと揺れる馬車の中で、不機嫌面の貴族らしい服装をした少年は流れる景色をただただ見ていた。
もう一人、向かい側で燕尾服に身を包み、楕円形の黒縁眼鏡をかけた青年は、そんな彼を微笑みながら見つめる。
「エリック様」
青年が名を仰々しく呼ぶと、向かい側の少年がちろりと視線だけを寄越す。
「良い知らせと悪い知らせがありますが、どちらを先に聞きたいですか?」
「…どっちも聞きたくない」
フンっと鼻を鳴らして再び窓の外へと視線を戻すエリックに、青年は一切動じず言葉を紡ぐ。
「エリック様は躾のしがいがありますね。さて、今日はどんな躾を」
「分かった分かった!オレが悪かったよ!どっちからでもいいから話せ!」
最後まで言い終わる前に割って入るほど慌てた様子の彼に、眼鏡の奥の灰色の瞳を細めて満足そうに青年は話始めた。
「では、まずは悪いお話から。…この後の予定ですが、急遽一件お仕事の予定が入りました」
「はぁ!?1日多くても3件って条件だろ!」
「申し訳ございません。先方よりどうしても本日しか時間が取れないとの要望がありまして」
「…っ!………はあ…まぁ、怒ったとこでオレに拒否権はないんだよな」
分かったよと眉をしかめつつも承諾したエリックに、青年は再度申し訳ありませんと謝った。
「その代わり、明日は一日暇になりました。どこかお出かけなさいますか?」
「本当!やった!!」
一変、表情を明るくして喜ぶ彼に、一枚のチケットを差し出す。
何?とそれを受け取ると、エリックの目がキラキラと輝いた。
「サーカスのチケットでございます。行かれますか?」
「行く!ぜーったい行く!!」
やったーーと、天井にチケットを掲げながらはしゃぐ姿に、青年は愛おしそうな瞳を向けた。
「リチャード、ありがとう!」
「滅相もない。全ては貴方の為に」
頭を下げるリチャードに、よく言うよと笑うと、つられて彼もその目の端を綻ばせたのだった。
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