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③にしおりをはさみました!
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③
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俺の幸せは長くは続かなかった。
次の日の夕方、急に美羽と連絡が取れなくなった。
何かあったのでは、と焦るが連絡先は携帯しか知らない。
昨日、家まで送っていればよかったと、死ぬほど後悔した。
なんとかして、連絡を取らなければ。明日は美羽の学校に行ってみよう。
そう考え、気持ちを落ち着かせた頃、ここ一ヶ月ほど帰ってきていなかったクソ親父が、急に帰ってきた。
親父の秘書とやらに、すぐに親父の部屋に行くように言われ、苛々しながら向かった。
部屋に通されると、親父は秘書に人払いをするように言い付け、部屋から出ていかせる。
なんなんだ、と年齢より若く見える親父の後ろ姿を睨み付ける。
「なんだよ、オレに用があるならさっさと言えよ」
勿体ぶってるのか、なかなか話し出そうとしない親父に半ばキレていた。
それでも話す気配もなく、部屋に誂えられたミニバーのブランデーをグラスに移し、ゆっくりと味わっている目の前の男に殺意すら覚えた。
「話があるのは、そっちだろう。言わなきゃならないことがあるんじゃないのか」
美羽のことがもうバレたのかと、冷や汗が流れる。必死でなんでもないフリを続ける。まだバレるわけにはいかない。
「なんも、ねえよ」
冷静さを装って、言い放つが、嘘がばれているのか、親父は嘲笑いを浮かべた。
「出口美羽とかいう女の、ことだ」
バレてる。逃げられないと感じたオレは腹をくくって親父に向き合う。
「美羽のこと、知ってるなら言っとくけど、オレら結婚するから」
「・・・何を言っている?」
「結婚できる年齢じゃないのは、わかってるよ、オレが言いたいのは、そんだけの覚悟で産んでもらうってことで、オレもそんだけの覚悟で二人を養えるようにしようと思ってる」
わかってもらえないのは、承知の上だ。そこまで一気に自分の決意を表明する。反対されても、どんな妨害を受けても絶対に諦めない。
そんなオレの覚悟を、この目の前の大人はまたしても嘲笑う。
「だから、お前はバカなんだよ。・・・まだ理解できんのか」
そう言うと、目の前に1枚の書類を差し出してきた。
「なんだよ、コレ」
目を通すと、誓約書と書かれてある。
署名は、出口美羽、となっていて、今後、オレに一切付きまとわないと記されていた。
「てめえ、美羽になにしやがった!」
思わず、胸ぐらを掴むが、相手は全く動じない。
「コレを見てもわからんとは、頭の悪さは母親ゆずりか。・・・そこに書いてある通りだ。その女がお前との子どもができたと、金を強請りにきたから、適当にまとまった金を渡して、それにサインさせた。尤も、子ども云々も嘘だったようだがな」
子どもの件が嘘・・・?美羽が金をせびりに来た・・・?コイツ、何を言っているんだ?
オレがこの世で一番嫌いな人間は、力が抜けたオレの手を、嫌そうに振り払い、革張りのソファに腰かけて、追い討ちをかけてくる。
「あの女、その金持って何処に行ったと思う?・・・ホストクラブだとよ。はっ、本当にお前はバカだよ」
嘘だ、嘘だ、嘘だ。
信じられない、信じたくない。
「金せびろうとして、お前に子どもができたって言ったのに、お前が結婚なんてアホなこと言って、金取れなかったから私のところに来たそうだぞ。こっちにくれば、子どもの件が嘘とすぐにバレても醜聞をおそれた父親からぶん取れると考えたんだろ。あの女の方が、お前よりは賢いな」
あぁ、これが現実か。
昨日の夜、これからの未来を考えて、幸せな気分に浸っていた自分を消し去りたい。
一番ついてはならない嘘で、オレを騙した美羽には、怒りを通り越し、もはや何の感情も浮かんでこない。
ただ、オレがバカだっただけだ。
救いようのないバカだった、それだけだ。
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