アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
あの夏の日にしおりをはさみました!
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
- しおりがはさまれています
-
あの夏の日
-
「お邪魔します。」
丁寧に靴を揃えてから上がる晴海の姿になつかしさを覚える。
そういやこいつはバカ丁寧で、家に遊びにくるときは必ず脱いだ靴を揃えてたな、と思い出す。
男友達のなかでそんな事する奴がいなかったから、俺はそんな晴海の行動が気になっていた。
晴海を気になりだしたのは、そんな他の友達とは違う一面を追いかけてたからだと思う。
「おー、立花の部屋っぽいね。あ、これ、まだ持ってたんだね!」
俺が小学生の頃から使っている目覚まし時計。
壊れる事なく、今でも使っている。
そんな物まで覚えててくれてたのか。
あの頃の気持ちがよみがえる。
俺、もしかしてまだ晴海の事が好きなのか?
「適当に座って。お茶がいい?酒にする?」
「お酒貰える?」
「ビールでいいか?」
「うん。」
さっき買ったばかりのビールを2つ袋からとりだし、一つを晴海に渡してやる。
「じゃ、取り合えず。」
ブルタブをあけて、軽く缶を互いにコツンとぶつけると、俺はいっきにそれをからからに乾いた喉に流し込む。
「で。話っていうのは?」
「いきなり核心をついてくるね!」
無邪気に笑っている。
「最後の花火大会の夜。覚えてる?」
また、胸がざわざわする。
最後の花火大会。
(転校するんだ。)
子供の俺にはどうにもできなくて、晴海の困った顔を笑顔にする事ができなくてもどかしかった。
「え、と。覚えてるよ。ってか、今、思い出した。」
「あのときの約束を果たしにきた。」
「や、くそく…?」
約束?
約束なんかしたっけか?
思い出せない。
あの日の記憶。
俺にとってあの日は人生最悪の日だったなぁ。
「ごめん、その約束の事は思い出せない。」
「そ、か。」
(僕、先輩と付き合う事にするよ。)
最悪の別れかた。
夏休みが終わる前に俺は転校した。
花火大会以降、引っ越しの日まで晴海に会うことはなかった。
もう、二度と会うこともないだろうと思ってた。
それくらい、引っ越し先は遠くて、子供の俺には絶望を感じさせる距離だった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
5 / 10