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新入生歓迎会 2にしおりをはさみました!
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新入生歓迎会 2
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あの日はきっと、リュウのしつこいぐらいの愛撫を体が覚えていただけだ。
もうそんな事は思わないはずだ。──きっと。
枕元にある電気のリモコンをピっと押す。ふっと明かりが消え、部屋の中に闇が訪れる。
ギュッと目を閉じ、俺は眠るよう自分に言い聞かす。しばらくして訪れた眠気に、身をゆだねた──。
「じゃあ新歓の内容は、一日目が鬼ごっこ、二日目がバスケに決まったわけだけど。
あ、鬼ごっこの詳しいルールは昨日白川くんが纏めてくれたから、目を通しておいてね」
紙を持ち上げ、全体を見渡す。
昨日細かいルールを作り、相楽先輩に渡したものだ。
…今更だけどさ。相楽先輩って2年だよね?
3年もいるなか、なんでこの人は敬語じゃないんだろう。
相楽先輩だから?
「鬼ごっことか、超久々~っ。しろっちナイスアイデア!」
今日は会議に参加の木宮先輩。
大方、相楽先輩に怒られたんだろう。本当に、この人のサボり癖は困る。
だいたい相楽先輩が木宮先輩を見つけて連行してくるんだけど、よく居所分かるなーと感心。
「じゃあ、景品を決めて行こうか。意見のある人は?」
相楽先輩の問い掛けに、次々と手が挙がる。
意見が出る度に俺はキーボードを叩いていった。出るわ出るわ、景品のアイデア。
豪華客船クルーズの旅だの、ハイブランドの新作スーツ(オートクチュール)だの、某有名お偉いさんご用達の老舗で豪華懐石料理だの。うわー金持ち。
しかし、だ。
アイデアの中で多いのが、生徒会役員と○○というもの。
相楽副会長と水族館だとか、木宮会計と遊園地だとか、…本田会長と映画館だとか。
なんでピンポイントで場所まで決まっているのかが謎。
ってゆうかそんなんが景品になんのか?え?意味わっかんねー…
ほとほと呆れる俺をよそに、この手の意見が多いのなんの。
んなもん景品にしなくても、遊びたきゃ普通に誘えばいいのに。
などと考えているうちに、相楽先輩が多数決を取ろうとしていた。
とりあえず鬼への景品としては、クルーズに。海行きたいから。1年への景品としては、懐石料理に。美味いもん食べたいし。
その二つに手を挙げたんだが…。
「じゃあ、これで決まりだね。会議はこれで終了。以上、解散」
相楽先輩の掛け声に、会議室を後にしていく先輩達。
そんな中座ったままの俺は今決まった景品に考え込む。
鬼への景品は、上位3名へ贈られる。
1位から、景品を選べる仕組みにしたんだが…。
ひとつは、豪華客船クルーズ。夏休みを利用。うん、まぁ、コレは景品としちゃ、いいとしよう。
はい次。
1日生徒会役員。つまり1日だけ生徒会役員になって、一緒に仕事をしよう!ということ。
え?何コレ。馬鹿なの?
そして、最後。
生徒会役員の中、誰か1名とデート。
は?何なの?もう一回言うけど、馬鹿なの?
意味がわからない…。
しかも誰が言い出したのか、鬼に捕まった1年はその鬼のお願い事を聞かなきゃならないオプションまでついた。
新入生よりも、先輩方のがメリット多くないですか?と思ったのは会議室の中、唯一1年の俺だけだろう。
そして1年への景品が、生徒会役員全員と学食ランチ、もしくは賞金10万円。
賞金10万円は、分かる。いや、金額は分からん。
10万稼ぐのにどんだけ必至か分かんのか。世のサラリーマンに謝れと言いたくなったのは…置いといて。
学食ランチ?いや、俺と誰も食べたくないでしょう。
賛成した各クラスの先輩方からも、お前はべつにいらねーよ、的な視線ビシバシ感じたし。
…まぁ、みんな賞金を選ぶだろう。
亮平だと間違いなく賞金選んでゲーム買おー!なんて無邪気な顔して喜びそうだな。
うん、俺も逃げきって賞金をいただこう。
会議室を後にした俺と相楽先輩、そして相楽先輩に左腕を拘束された木宮先輩は、生徒会室へと戻ってきた。
先に入った相楽先輩が、あれ?と不思議そうな声を出した。
続いて入ると、ソファに脱ぎ捨てられているブレザーが目に入る。
会長室へと歩いていった相楽先輩がドアを開け、中を確認。
「やっぱり隆盛か。いつ来たんだろ」
げ。
俺のしかめっ面に築気づかず、相楽先輩の後ろから中を除く木宮先輩。
「ホントだー。疲れてんのかな?寝かしとこー起きたら仕事回されるしぃ」
「心配しなくても、俺が仕事をあげるよ、明良」
「えーっ」
会長室の扉を閉め相楽先輩はお茶を入れに、木宮先輩はソファへと座った。
俺も向かい側に座る。
「はい、どうぞ」
「さんきゅー」
「ありがとうございます」
今日はミルクティーみたいだ。
「去年は庭園でお茶会だったけどさー。今年は楽しみだなぁ、鬼ごっこ」
両足をソファに上げ、体育座りのように抱え込む木宮先輩。
「確かにね。ダンスパーティーとかお茶会とかは別に新歓でしなくても、行事であるしね」
「もういっそのこと、毎年鬼ごっこでいいんじゃない~?」
「かも。隆盛に提案しようか」
「さんせーいっ!」
と、木宮先輩が片手を上に上げたところで、会長室の扉が開いた。
「あ、隆盛!おはよーん」
上げたままの手をヒラヒラと振る木宮先輩。
「隆盛いつ来たの?」
カップを置いて立ち上がる相楽先輩。
「あぁ、30分ぐらい前だ」
俺の横に座るリュウ。
…確かに相楽先輩と木宮先輩が並んで座ってるから、隣が開いてるけどこっち来んなよ。
っつか、ずっと寝てれば良かったのに。
少しでも距離を取ろうと、気持ち横にずれる。
リュウの分の紅茶を入れた相楽先輩は、毎年新歓は鬼ごっこでいいんじゃないか、とさっき話していた内容をリュウに聞かせていた。
「そうだな。いいんじゃないか?
イベントとして成り立っているし、毎年何をするか考えなくて済むだろ。
それにクルーズだとか茶会だとかやったところで新鮮味もないしな」
適当に答えた鬼ごっこ案が、アッサリと毎年恒例行事に決定してしまった。いやいやいや。発案者としてはなんかこう、いたたまれないんですけど。鬼ごっこですよ?
絶対誰か思うって。高校にもなって鬼ごっこかよーって。んで考えたの誰だよって。何だよ庶民の考えかよって。っつか何だよリュウのやつ、最後の自慢かよ。クルーズだの茶会だの庶民はやったことねぇから新鮮ですよ、ってーかなぁ、別に金持ちじゃなくても高校生にもなって鬼ごっことか、庶民でも新鮮ですーってアレ、話ズレてる?
一人の世界に入っていた俺は、三人の会話が途切れていることに気づいた。
そして横から強い視線を感じる気がする。
…気のせいだ。そう思いたい。
視線には気づかない振りを決め込み、俺は紅茶を飲む事に集中する。
「白川」
が、横から声をかけられ、無視をするわけにもいかなくなった。
「…なんですか?」
顔は向けずに、カップを見つめたまま答える。
「顔を見せろ」
「…は?」
突然そんな事を言われ、思わずカップから顔を横に向けてしまった。
「だから眼鏡をはずして、前髪を上げろと言ってるんだ」
「嫌です」
間髪を容れずに即答。
何でそんなことをしなくちゃならない。嫌に決まってんだろ!
「何故だ。顔ぐらい見せたっていいだろう」
「嫌です」
またもや即答すると、リュウの眉間にシワが寄った。
「見せれんぐらい、酷い顔なのか?」
「そうですね」
酷い顔で結構。むしろそう思っとけ。興味を持つな。
「酷くてもいいから見せろ」
「嫌です。セクハラですよ」
「あぁっ?」
お、眉間のシワが増えた。
「知らないんですか?相手が不愉快に思った瞬間から、セクハラは成立するんです。
俺は今、不愉快です。だからセクハラです」
リュウから顔をそむけ、再び紅茶を飲む。
「ちっ。会長命令だ、見せやがれ」
「圧力をかけた命令は、パワハラですよ。セクハラにパワハラですか。
最低ですね」
次から次へと、厭味が出てくる。うん、リュウに対し俺はかなり積もり積もったものがあるみたいだ。
「てっめ…!」
気配を感じた俺は、咄嗟に左手を顔の横へ。
その瞬間、パシっという音が鳴り、衝撃で半分以下まで減っていた紅茶の水面が揺らぐ。
あぶね、もうちょっとで紅茶こぼれるとこだった。
右手に持っていたカップをソーサーに起き、リュウの右手首を掴んでいた左手を離す。
「…次は実力行使ですか。知ってます?人の嫌がることをするのはいじめですよ」
「口の減らねぇ…っ」
なおも手を伸ばしてこようとするリュウにみがまえた、その時。
突然、二つの笑い声が響いた。
「ップ。あっはっは!もうダメ!隆盛けちょんけちょん!しろっち強ぇー!」
「ふふっはははっ…隆盛にそこまで言う人、初めて見た…っ」
木宮先輩はお腹をかかえ大爆笑、相楽先輩は楽しそうにこっちを見ていた。
「てめぇら…」
「はいはい隆盛、落ち着いて。白川くんの言う通り、無理強いは駄目だよ」
「…ちっ」
ニマニマと笑う相楽先輩に制されたリュウは舌打ちをすると、ソファから会長席へと移動した。
「あーおもしろかった!いやーナイスだね、しろっち」
「…はぁ、どうも」
何がナイスなのか、イマイチ分からん。
それから俺たちは各自仕事に取り掛かったんだけど…リュウはずっと機嫌が悪いままだった。
反対に相楽先輩と木宮先輩はずっと楽しそうだった。
顔を見せろと言われた事に戸惑いと焦りを感じ、仕事の間はずっと無言を貫いた俺。
早くこの場から去りたい一心で仕事をこなし、全て終わらせると逃げるように生徒会室を出た。
つっかれた。
首をぐるっと回しながら携帯を開くと、メールが届いていた。
亮平からで、今日もゲームをやろうというお誘い。
今日は行けないんだよなぁ。亮平の部屋に行って話すか…と思い、返事はせず亮平の部屋へと向かう。
ベルを押すと、亮平が出てきた。
「よう!あれ?制服?着替えないのか?」
「うん、ちょっと今日は無理なんだ。それで二人に話があって」
「そーなんだ。話?まぁ、上がれよ」
リビングに入ると、純がソファにくつろぎながらテレビを見ていた。
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