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宿泊研修 2にしおりをはさみました!
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宿泊研修 2
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受付でタクシーを呼んでもらおうと声をかけると、すぐに来るからと言われ玄関口で待つ。
ボーっと空を眺めていると携帯が鳴り、鞄から取り出し画面を確認すると……そこには¨リュウ¨の文字。
躊躇ったものの、とりあえず、出る。
「──もしもし」
『俺だ。今夜、いつもの場所で待つ』
誘いの言葉に一息置いて、答えた。
「…今日は、行けない」
どうしてだ─と聞いてくるだろうな、そう思っていたんだけど、リュウが口にしたのは全く違う、そして俺を戸惑わせる言葉だった。
『──泣いたのか?』
「…え?」
思ってもいなかった質問に、脳が理解するまで時間がかかった。
「…なん、で」
『声がかすれてる』
心配そうなニュアンスを含んだ声が、耳元から聞こえる。
「…っ…関係、ない…。とりあえず、今月は無理。来月にしてくれ」
そう一方的に告げ電話を切ると、携帯を鞄の中へ入れる。
玄関前の駐車スペースに入ってきたタクシーに乗り込みそして学園へと戻る中、何回か鞄の中で震えていた携帯。
それを意識しながらも無視していると、学園へ着く頃にはピタリと止んでいた──…。
翌朝、土曜日。
純なら起きてるかな…と、純の部屋を訪れる。案の定純は起きていたようで、二人で食堂へと向かった。
怪我の具合を聞かれ回復に向かってると話すと、ホッとした顔をした純。
二人向かい合って朝ご飯を食べていると珍しく亮平が起きたらしく、純の携帯に電話をしてきた。
食堂にいると純が告げると、数分後に亮平がやって来て一緒にテーブルを囲む。
ちょうどいい、二人に宿泊研修に行くことを話そうかな、そう思い口を開きかけると、タイミング悪くポケットから着信を告げるバイブレーション。
またリュウかな…と思い、着信画面を確認する。
「っ…!」
その名前を確認した俺は体をビクッとさせてしまった。
着信画面を眺め固まる俺を不思議そうに二人が見てくる。
「出ないのか?って、聖夜の携帯って白だったっけ?」
「ん?黒じゃなかった?」
──しまった。完璧、気を抜いていた。
「…あ、えっと…これは渡されてるんだ。知り合いに。ちょっとわりぃ」
二人に曖昧な笑みを浮かべ、俺は席を立った。そして食堂を出て隅っこに向かう。
止まることなく鳴りつづける携帯。画面にはーー¨八澤¨の名前。
「…もしもし」
『よぉ。元気か?』
「…まぁまぁです。今忙しいんで…」
早々に電話を切ろうとする俺に、喉の奥でクッと笑う八澤。
『まぁ、待てって。
ここ二週間程街に顔を出していないらしいな。どうしてだ?』
「…どうだっていいでしょう?昨日ちゃんと金は振り込んだ。どう商売しようがこっちの勝手だ」
『ククッ。まぁ、金さえ納めてくれりゃ文句ねぇよ』
「だったらもういいですよね」
俺は耳から携帯を離し、終了のボタンを押す。
自然と出るため息。
「…はぁ。…くそ」
この携帯を知人の前で出すつもりはなかったのに。
二人…変に思ったかな──どう言い訳しようか迷いながら席に戻る。
だけど二人は気にしていないのか、それとも気を使ってくれたのか、聞いてくることはなかった。
そのことに少しホッとした俺は、改めて宿泊研修へ参加することにしたことを告げると、喜んでくれた二人。
母さんにお土産話が沢山できるよう、思い出をいっぱい作らないとな。
朝食も食べ終わり、部屋に戻った俺は相楽先輩の部屋へ内線をかける。
理事長に今から宿泊研修に参加出来るか聞きたいと願い出ると、その場で自分の携帯で電話をかけてくれた。
急に申し出た俺を、理事長は二つ返事で了承してくれたそうで、安心する。
担任である長谷川先生にも話しておいてくれるそうで、月曜日に亮平たちの班に入れるか確認しよう。
相楽先輩にお礼を告げて電話を切ろうとすると、電話の向こうから聞こえた猫の鳴く声。
「猫、飼ってるんですか?」
『ん?あぁ、隆盛が飼ってるんだよ。昨日出かけるって言ったから預かったんだ。
あぁ、白川くんが隆盛の部屋に運ばれたときは俺が預かってたから見たことなかったんだね』
え。リュウが…?…意外すぎる。
「…そうなんですか。というか、動物って飼っていいんですか?」
『アハハっ。本当は駄目なんだけどねぇ。
ちゃんと管理するって約束で許可もらったんだって』
「…そうですか」
『とっても可愛いこだから、今度見せてもらうといいよ』
そう言ってきた相楽先輩に、俺は曖昧な返事をして電話を切った。
見せてもらうって…今は正直、生徒会長としても客としても会いたくないのが本音。
……自分の中のナニカが変わりそうで、こわい。俺はそんな思いを抱えていたーーー。
あれ以来リュウから電話はかかってこず、月曜、金曜には生徒会に顔を出し、木曜には病院へ、そのあと母さんの所に寄って帰る、という日々を過ごしていた。
足はだいぶ回復していて、宿泊研修に参加することに支障はない。
いよいよ来週から宿泊研修。月曜から金曜まで4泊5日、シンガポールへ。
今はホームルームの時間で、集合時刻などの確認をしているところだ。
「楽しみだなー。俺シンガポールは初めてかも」
「あ、僕も。いつもヨーロッパの方ばかりだったし。聖夜は?」
「シンガポールはないなぁ。ノルウェーなら行ったことあるけど」
母さんの産まれた国らしく、12歳ぐらいの時に行った記憶がある。
母さんは産まれたのはノルウェーだけど、育ったのはイギリスだって言ってたな。
小さいとき、母さんの話す言葉がたまにノルウェー語だったり、ウェールズ語だったり、英語だったり、日本語だったりで、ちんぷんかんぷんだった事を思い出す。
ノルウェー語とウェールズ語を話すことが少なくなり、俺は母さんから英語と日本語の両方で育てられた。
まぁ、英語が自然と身についたのは、母さんのおかげだ。
そんな事を考えていると、吉沢がぼーっと窓の外を眺めていることに気づく。
亮平たちの班に入ることができ、今は班で固まって座っているため横に吉沢がいた。
「どうした?吉沢」
俺の声にハッとして、顔をこっちに向ける。
「なんか元気ないね?どうしたの?」
純も亮平も吉沢を見た。
「…いや、ゴメン。ちょっとぼーっとしてただけ。何でもないよ」
吉沢は笑顔でそう言ったが、その笑顔は無理矢理作ったものだった。だけど、俺達は深くつっこむことはせず、先生の話に耳を傾けた。
土日を挟んで月曜日。
集合場所である学園の玄関口に集まる生徒たち。
いくら一般の学校よりも生徒数が少ないといっても、三学年合わせて約240名が集まれば騒がしい。
集合時間が少し過ぎ吉沢が来ないことに疑問を持っていれば、担任の長谷川先生が説明をしてくれた。
吉沢は火急の用事で宿泊研修は不参加となったらしい。
少し様子がおかしかったことに何か関係があるんだろうか…と思ったが、今ここに本人がいないので聞くこともできない。
俺達は学園が用意したリムジンバスに乗り込み、そして出発したバスは空港に行くかと思いきや、なんと向かったのは相楽家所有のプライベートエアポート。
そしてこれまた相楽家所有のプライベートジェット。
あまりの規模のデカさに、俺は呆然とした。機内に入ると、これまた豪華仕様な内部。
照明はクリスタルが反射してキラキラだし、床は絨毯だし、席は広いしふかふかだし、何だコレ。
さずかにここまでの規模の金持ち具合に、驚きを隠せない生徒が多数いた。
亮平と純が座席に座り、俺はその前に座る。
フライト時間は、約8時間。シンガポールには昼の3時ぐらいに到着予定だ。
朝早くに起きたため、だんだん瞼が重くなってくる。
あくびをひとつして、俺は離陸早々夢の世界に旅出っていった。
「着いたー!」
両手をぐーっと上に伸ばし、体をほぐす亮平。
2時間ほど寝ていたらしく、起きて後を振り向くと亮平と純も仲良く寄り添い眠っていた。
それから1時間ほどして起きた二人。
シンガポールで何をするかなどを話したり、映画を見たりなどして過ごし、ようやくシンガポールに到着。
気温は30度を越え、汗ばむ気候。長袖のパーカーを着ていた俺はそれを脱いで半袖になった。
まず俺たちは空港に到着していたバスに乗り、ホテルへと向かう。
時間も時間だし、今日はホテル待機らしい。
「…すげ。」
着いた先のホテルを見上げ、見た目の豪華さに目を見張った俺。
なんだこの建物。
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