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守りたいもの 2にしおりをはさみました!
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守りたいもの 2
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「簡単に?言ってくれるね。君に何が出来るっていうのさ。僕に刃向かう勇気は認めてあげるよ。
だけどね?世の中には絶対に勝てない相手がいるんだよ。それもわからずに楯突くなんてね、馬鹿のやることだ」
顔に笑みを浮かべながら、瞳だけは鋭く隆盛を見据えている。
その瞳を見返しながら、隆盛はただ黙って小笠原の話を聞いていた。
「弱者は強者に逆らわず、言うことをただ聞いていればいい。君には、僕をどうにも出来ない。
”小笠原”は君の手には負えないよ」
わかった?と隆盛に問う。
「そうだな、確かに”本田”じゃ、到底小笠原には適わないだろう」
「でしょ?だったら早く放し……」
「だが。」
小笠原の言葉を遮り、隆盛がククッ笑う。
「”俺”には出来る」
その言葉に、小笠原はあざ笑う。
「君は、何を言ってるの?」
「言葉通りだ。
あぁ、確かに、弱者は強者の言うことを聞いていればいい。
到底適わない相手に楯突くなんざ、愚かだ」
そこで言葉を区切り、隆盛は冷笑を浮かべ小笠原を見た。
「てめぇの言う通りだよ。だったら──てめぇは俺に楯突くな」
言葉の意味が分からず怪訝そうな顔をする小笠原に対して、隆盛はククッと笑う。
「改めて挨拶をしようか?」
隆盛は小笠原の前まで近づく。そして、隆盛が放った言葉に俺までもが固まった。
「黒沢隆盛。それが俺の名前だ」
く、ろ……さわ……?え…?だって、隆盛は……。
「な、にを言って……そんな嘘を言って切り抜けるつもりなの?
はっ。浅はかすぎて、笑いも出ないよ」
小笠原は一瞬動揺したものの、すぐに冷静になる。
「嘘だ?これを見ても、そうだと言うか?」
そう言って隆盛がズボンのポケットから取り出し目の前に突き出したのは、花のような模様を象った銀細工のエンブレムが揺れるネックレスだった。
それを見た小笠原の表情が初めて崩れ、目を見開き目の前で揺れるエンブレムを見ていた。
「そ、れは……蘭の、華……」
「この紋様は黒沢一族の証。てめぇだって知ってんだろ?このネックレスを持つ者の、意味を。
それに、この真ん中にある石の色、なんだ?」
俺にはエンブレムの後ろしか見えていない。どうやら、中心には何かがはめ込まれているようだ。
「……、黒……」
小笠原が呆然と答える。
「このネックレスは”黒沢”のみが持つことを許される。
そして黒の石は、直系の証。これで理解したか?」
隆盛はそのネックレスを再びズボンのポケットへと入れ、小笠原を見下ろした。
「弱者は強者の言うことをただ聞いていればいい──そうなんだろ?」
その言葉に、小笠原の体がピクリと震えた。
「てめぇが言った言葉をそのまま返してやる。
『てめぇには、俺をどうにも出来ない。 ”黒沢”はてめぇの手には負えない。 』」
そこで言葉を止め、小笠原に不敵な笑みを向けた。
「”小笠原”ごときが、”黒沢”に刃向かうな」
隆盛のその言葉に、小笠原の顔が歪む。
「確かに、上にのし上がっていくには、正義だけじゃやっていけねぇ。
綺麗事を並べるつもりもない。俺たちだって、目的の為なら手段は選ばないさ。
だがな、てめぇは悪に手を染めすぎた。そして何よりも──聖夜にした事を許す気はねぇ」
そう言った隆盛は俺の横まで戻ってきて、肩を強く抱いた。
「覚悟しろ」
その瞬間、小笠原は肩を激しく揺さぶり、わめき始める。
「クソがっ、離せっ!僕は何も間違ってない!
何が悪い!玩具を欲しがって何が悪いんだ!」
「うわっ、ちょ、おいミツ!しっかり抑えろ!レン!足掴め!」
「……白夜は、玩具じゃ、ない……!」
「うるさいっうるさいっうるさいっ!僕は悪くない!離せっ離せっ離せぇっ!」
「うわ、お前っ……大人しくしろっ!」
体全体を揺さぶりながら必死に腕をもがき叫ぶその様に半ば圧倒されながらも、ルイとミツが両腕を抑え、レンが足を掴み抑える。
「ちっ……沈めるか」
そう言って真吾さんが一歩踏み出した、その時。
かすかに、地面を踏み締める”もうひとつ”の足音を聞いた気がした。
反射的にその方向へ視線を向ける──そして。
俺は咄嗟に隆盛を両腕で突き飛ばし、隆盛たちに背を向けた。
迫って来る者に対して、正面を向く。
暗闇の中、月の光に照らされ鈍く光るものを手に持ち、瞳をぎらつかせながら迫り来る人物──八澤。
あっという間に目の前まで迫った瞬間、左わき腹に、鋭い痛みが走る。
そして、俺が着ていた白い着物に、赤が、舞った。
引き抜かれたその鈍く光っていた刃には、赤い血がベットリとついている。
ナイフを手に持つ八澤の右手首で、紫のネクタイが揺れていた。
再び振り下ろされる刃。
同じ箇所に、痛みが走る。
そして再び抜き取られたそれは、また俺に向かってきた。
「死ねぇぇぇっ………!」
体が、後ろに引っ張られる。
そして、あたたかいものに抱きとめられた。
「ククッアハハハ!死ねばいい!僕の玩具にならないなら、死ねばいいんだ!」
小笠原の狂ったような、叫び声。
ひどく長く感じた、だけど一瞬の出来事。
呻き声がふたつ、聞こえた。
そして耳に届くのは、みんなの声。
何か、叫んでる。
あぁ、名前だ。
俺の名前を呼ぶ声がする。
──隆盛。
「おい、救急車!レン、救急車呼べ!」
「…っ、わ、わかった!」
「白夜!…っ、の、ヤロォ!殺す!」
「ルイ!落ち着け!ミツ!ルイ止めろ!」
「ルイ、今は、白夜!」
「…っ、クッソ……!」
みんなが、叫んでる。
「…っ、聖夜っ……!」
隆盛が、呼んでる。
「……りゅ、せ……」
「話すな!…っ、クソ!何で……!」
「……りゅ、せ、が……あぶな、かった…か、ら……」
だって、あのままだったら、隆盛が刺されてた。
だから、体が、手に反応したんだ。
体勢を立て直そうとしたけど、もうあいつは目の前まで、迫ってきてたから。
防げなかった。
だけど。
「ぶじ、で……よか、た……」
隆盛を、守れて、良かった。
俺を救い出そうとしてくれた、お前を。
守れて、良かった。
「……かが……、……じ……っ、……」
おかしいな。言葉が聞き取れない。
段々と声が遠くなっていく。
隆盛の姿も、ぼやけていく。
隆盛。
なぁ、隆盛。
───笑って。
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