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巻然にしおりをはさみました!
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巻然
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「で、この絵が描き上がった、と」
「どうだね鄭大人。吾はかなり傑作だと思うが」
宮城から帰ってくると、書斎に叔成、長義と伯岐が訪れてきた。
やたら自信満々に胸を張る長義が私に絵を渡す。確かに普段の長義の絵からは飛びぬけていいものだと思う。傑作だというのもわかるが、これは……
「目の前に本人がいて描いたんだろう?なんで美人画になるんだい?」
「仕方なかろう!どこぞの阿呆が言わないせいで吾は血雲どのが女性だとずっと思っていたのだ!」
「くくっ、あっはははははっ!ごめんな、長義!」
大笑いしながら長義の肩をばしばしと叩いている叔成。伯岐は恥ずかしいのか、顔を真っ赤にして俯いている。もう一度、手元の絵をまじまじと見た。
艶やかな紅い唇。潤みを湛えた紅い瞳。白い肌に銀の髪。そのどれを比べてもやはり本物にはかなわない。その事実になぜかひどく満足感を覚えた。これが独占欲というものなのだろうか。
「まあ、いい。これは飾らせてもらおうか」
「ふっふふ、さすが鄭大人は吾の絵をよく理解してくださっている」
「美人画だけどな」
「叔成は黙っておれ!」
伯岐が所在なさげにしていたので、そっと手を繋いでこちらに引き寄せる。抱き締めてやれば、伯岐は頬を染めて私に身体を預けてきた。叔成はにやにやと、長義はまじまじと穴が開くのではないかというほどに私を見ている。
「あーあ、もう見せつけてくれちゃって」
「おお……これはこれは、絵になるな……」
「……今日はもう遅いからこれから私たちを拘束するのは勘弁してほしいかな」
「あいや、失礼。吾も疲れたからその絵はまた後日だ」
「俺が癒してやろうか?」
「叔成は黙っておれと言っただろうが!」
顔を真っ赤にして怒る長義とにやにやと楽しそうに笑う叔成。毎回思ってはいたのだが、叔成が長義をからかうのは度が過ぎている。これはもしや……。
「君たち、できているのかい?」
「な、な……な…………!!!!」
「ああ、そうですよ。な、長義?」
「こんの、阿呆たれが――――ッ!」
叔成に抱き締められて叫びながらぶんぶんと拳を振り回す長義。どうやら図星らしい。伯岐はきょとんとして二人を見つめている。
「なるほど。それで、叔成は伯岐が男だと言わなかったんだね?」
「こいつが血雲血雲ってうるさいから、俺だって少しは妬いて意地悪くらいしたくなりますよ!」
「っ……!」
叔成の素直な言葉に顔を赤くする長義は確かになかなか可愛い……かも……しれない。まあ、私には伯岐がいるのだ、他の者に目移りなどするはずがない。伯岐は二人のやり取りを至極楽しそうに見ていた。
「……そうだ。夜は客間が空いているよ」
「お心遣い感謝します」
にやりと笑った叔成には私の意図が伝わったらしい。長義と伯岐は意味を掴みかねたのか、首をひねっている。まあ、特に長義はわからないほうがいいだろう。叔成が殴られるのが目に見えている。
「さ、伯岐。君の部屋に行こうか。……今日は寝かさないからね?」
「っ……!」
低い声で囁けば、伯岐の身体は小さく跳ねた。叔成と視線を交わす。叔成は片目を瞑ってみせた。伯岐の部屋に向かおうと書斎の扉を開くと後ろで思い切りはたかれる音がした。
どうやら意図を理解してしまったらしい長義に、叔成がはたきを食らったらしい。とばっちりを受ける前に、そそくさと伯岐の部屋に向かうことにした。
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