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俗情にしおりをはさみました!
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俗情
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馬車に揺られながら、まじまじと二人を見遣る。
これが、商伯岐という男か。己にべったりとひっついて震えているその小さく華奢な身体を、仲影殿は労わるようにやさしく撫でていた。白い髪と肌に紅い大きな瞳。まだ、少年のような儚さがある。
「伯岐……大丈夫、かい?」
「仲影っ、仲、影……怖かった、です……!」
「もう、心配はいらない。……子珱、ありがとう。随分碁が強いんだね」
「相手がずぶの素人だったから勝てただけです」
兵法を学ぶのが嫌いで、よく碁をして遊んでいたのだ。そのうち周りでやっている奴らの誰も相手にならなくなってつまらなくなり、やめてしまったが。
相手の男はどうも碁はやったことはあって規則だけは知っている、と言うように見えた。初心者のよくやる戦略だから、それなりにひっくりかえせる。
「うちの食客には碁の名手がいるんだが、今度対局してみないか?」
「……本当ですか」
「仲影、この方は……?」
自分より強い相手と対局できるのはやはり燃える。とても楽しみだ。そして、漸く周りを見渡せる余裕ができたのだろう。俺を見て、伯岐殿は首を傾げた。当然だろう。いつのまにか仲影殿の隣にいたのだから……正直、二人がそういう関係だというのなら嫉妬されても仕方ない気もする。
「雇った傭兵だよ。子珱という」
「子珱殿……ですか。はじめまして。仲影から話は、聞いているかと思いますが。商伯岐です」
「よろしく、伯岐殿。仲影殿から、小さな恋人だと聞いた」
伯岐殿の頬がぽっと朱くなった。なんてことを言ったんだ、と言いたげな視線を仲影殿に向けている。くすりと笑って肩をすくめた仲影殿に思わず笑ってしまった。
仲睦まじげだが、親子というか恋人というかそんな曖昧なものであるようにも思えた。
「さて、君の役目は一応終わったと言えるが、どうする?手をまわして前の役職に戻してもいいし、このまま私の私兵になってもいい。報酬も君の前の役職よりは多めに払うし、瑶元……ああ、うちの食客の碁の名手なのだが、彼との対局も彼の気が乗れば何度もできるだろう」
仲影殿は楽しげに笑って選択肢を提示する。確かに、国のためと思うなら前者を選ぶべきだろう。だが悲しいかな俺は俗物で、報酬と碁の相手につられている。報酬よりも碁の相手が魅力的だった。
「このまま、よろしくお願いします、仲影殿」
「そういってくれると思ったよ。よろしく、子珱」
にっこりと笑った仲影殿。ちょうど、馬車が止まり御者が到着を告げた。先に降りるように言われそそくさと馬車から降りる。振り向くと、仲影殿が伯岐殿を横抱きにして降りてきていた。困った顔をする伯岐殿がまた可愛らしく、思わず笑みが零れた。
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