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契約精霊その1その2にしおりをはさみました!
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契約精霊その1その2
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「いよいよ…今夜だね、クラウィス」
紅茶モドキからそっと目をそらす僕にマーシェは心配そうな表情で僕に問い掛けてきた。
その姿はまさに慈悲深き天使が自分の為に心を痛めてくれている図、なのだろう…
その憂い顔を僕ではなく第三者が見れば感激のあまり目に涙を浮かべ、その麗しい手を取り、まるで自らの過ちを神に懺悔する罪人
(つみびと)の如く頭を下げながら、天使(マーシェ)に感謝の言葉を捧げるのかも知れない…のだろうが……残念ながら僕はそんな事は絶対にしない。
何故ならマーシェは、僕に対して心配んて全然していないからである。
ただ面白がっているだけなのだ。
何故そう思うか…その憂い顔に似合わない程に目が笑ってるからである。
「おもしろがってなんか無いよ?親友の為にちょー真剣だよっ?目だって笑ってないしね」
しかも普通に心を読んで答えている。というか、そのセリフが既に違うだろ……。
はぁ……
思わず僕はため息をついてしまった。
ため息をつくと幸せが逃げると言うが、つかないとやってられない。
けれど忘れていた。ため息をつく事でこの後がさらに面倒になる事を…
「…ひどい。ひどいよっ、クラウィスッ、僕を疑うの?僕はこんなにもクラウィスを想ってるのに…」
そのため息を聞いて、よよよよよと泣き崩れるマーシェ。
だが先程の言動と泣き方のリアクションがオーバー過ぎて、どう見ても嘘泣きにしか見えないので残念な事に感動も何も出来ない。
隣で鼻を啜るマーシェを無視しながら、僕はそっと1人の青年の姿を思い浮かべる。
これ以上めんどくさい事にならない内に、早く来てくれないだろうか…
僕が遠い目をしている事に気が付いたマーシェが、頬を膨らませさらに何かを言おうとした。
だが姿の見えない神様は僕の事を見守ってくれているらしい
『いい加減にしないか、マーシェ』
「うひょっ」
やっと来た。
ほっとしながらマーシェの方を見れば、褐色の肌をした青年に片手で襟首を掴まれ、ぶらりと持ち上げられていた。
その青年は僕が精神的に疲れている事に気が付いたのか、済まなそうな表情(かお)をしながら頭を下げた。
『いつも迷惑をかけて申し訳ない、クラウィス殿』
その言葉に思いっきり反応したマーシェが、がうっと吠える。
「俺がいつクラウィスに迷惑かけたって言うんだよっ、ドルイドッ」
『今現在だろうがっ!』
彼はマーシェの契約精霊の内の1人。土の精霊ドイルド
鷹の様な鋭い茶色の瞳に、トパーズの石で造られているピアス。褐色の肌に、鍛え抜かれたその身体は同じ男としてとても羨ましい物だ。
彼は精霊の中でも上位に位置する6枚羽の精霊で、生きていた年数も力もとてつもなく強い存在である。
そしてここだけの話…彼はマーシェのお世話係である。
……本人は否定しているが…
?
「っていうか、今日森から来るの早くないドイルド。僕とクラウィスの朝のラブラブを邪魔しないでくれないかな」
『何がラブラブだ馬鹿者。どう見てもお前がクラウィス殿に迷惑をかけているだけじゃないか』
ぶすぅと子供みたいに頬を膨らませて言うマーシェに、ドイルドは呆れている。
確かにこれをラブラブと言う人がいるのなら、それはその人の目がおかしいのだろう。医者に診てもらう事をお勧めする。
しかし何を根拠にそう言ってるのか分からないのだが、何故かマーシャは自信満々に答えてきた。
「どこを見て言ってるのかなぁ、ドイルド君。ほら、クラウィスもこんな楽しそうに…」
と、ふっふっふっと変に笑うマーシェが期待のこもった目で僕を見てきたので、僕はすっと逸らしてやった。
『…毎日毎日済まないな、クラウィス殿。』
「いいえ、慣れてますから。それにドイルドさんがマーシェと契約してくれてから大分楽になりましたし…あんまり気にしないで下さい。」
ええ???なんでぇ??クラウィスゥゥゥと泣き叫ぶマーシェを僕らは無視した
というか近所迷惑だ、今何時だと思ってる。
と思ったら、ドイルドも察してくれたのかマーシェの頭を叩(はた)いて止めてくれた。
本当にありがたい。
「ひどいよドイルドッ、っていうか普通相棒の頭を叩く奴が何処にいるんだよっ!!」
『ここにいるだろう』
「……因みに1つ訂正しておきたいのですが、本来の精霊はこんな事はしません。
本当ならこの辺で精霊について、又その他色々の説明をしておきたいのですが、マーシェのセリフが長く作者が疲れてしまったので、次回にしたいと思います。身勝手で申し訳ありません。」
「??…クラウィス、誰に話しかけてるの?」
「本編には関係無いから気にしなくていいよ」
こてんと首を傾げるマーシェに軽く流す様にと伝えた
駄目な作者の書く作品は大変だ、という事である。
?
本編に戻って……。
僕はドイルドの分のカップを用意し紅茶を淹れる。
「どうぞ」
『かたじけない』
律儀に頭を下げるドイルドに僕も下げ返す。
僕にとってドイルドはマーシェの契約精霊というだけでは無く、紅茶好き精霊という認識の方が強い。
つまり僕とドイルドはお茶会仲間なのだ。
ドイルドは僕の紅茶を気に入ってくれていて、とても美味しいと言って飲んでくれる…同じ様に美味しいと言ってくれるマーシェと違って、そう言ってもらえる度に僕も素直に嬉しく感じる。
またそのお礼と言っては珍しい茶葉をドイルドが持って来てくれる事もある(律儀な精霊なんです)
中には精霊界にしか存在しない茶葉もあるので、僕もとても楽しみなのである。
『良い香りだな…ジャスミンティーか?』
「そうです」
ドイルドは香りを楽しみながら紅茶を飲むと、瞳を緩ませ微かに微笑んだ。
ここだけの話、僕は彼のこの表情が好きだ。
「さすがクラウィス殿だ、とても美味しい」
「……ひどいよっ、二人して俺を無視してっ」
チラリと声がした方を見れば、マーシャはいつのまにか部屋の隅に移動して、僕達に背中を向け膝を抱えていた。
そんなマーシェを横目にドイルドを見れば、彼は完全にマーシェを無視して紅茶を飲んでいる。
「…別に無視してる訳じゃ無いよ」
何か言わなければ面倒な事になると考えた僕は、次にかける言葉を考えながら呟いた。
だが無情にもドイルドはキッパリと切り捨てた。
『くだらない事に対して返答するのが面倒なだけだ』
「???…ひ、どい…???」
ドイルドの言葉にマーシェは肩を震わす…振りかどうかは分からないが(今回は振りではない気がする)、泣きまで入れば面倒な事になる事間違い無い。
その時、そっと僕の横を風が通った。
風の行く先を目で追えば、思った通り可愛らしい彼が膝を抱えたマーシェの背中に抱き着いていた。
『おはよ、マーシェ』
彼がふわんと笑うと優しい風が辺りを揺らした。
彼はドイルド同じマーシェの契約精霊、風の精霊チェリー
いつもの如く眠いのか半分程閉じている緑の瞳に、耳にはドイルドと同じトパーズの石で造られたピアス、ふわふわの茶色い髪に、ドイルドとは正反対の小柄で線が細い身体
ちなみに付け加えて置くと、その容姿から少女に見えるがれっきとした少年で、さらに言うならば彼も精霊の中では上位の6枚羽の精霊だ。
「チェリ~」
『……どう…したの…?』
チェリーはいつもの如く眠い為、目を擦りながらマーシェに応える。
その途端、狩り人が獲物を見つけたかの様な勢いでマーシェがガバッと振り返る。
「やっぱり、俺の気持を理解してくれるのはチェリーだけだっっ」
『???………??ぐぅ…』
半ば眠気の為意識を失いかけているチェリーにマーシェは思いっきり抱きつき返した。
そしてドイルドに向けてにやりと天使の顔で悪魔の様に笑う。
その眼は恐らく、羨ましいだろと語りかけている。
『それはどうでも良いが、良いのか?そろそろ学園が始まる時間ではないのか?』
その表情に気が付か無いのか、あるいは無視しているのか…ドイルドは紅茶を飲み干して、空になったカップを置きながら淡々という。
そのドイルドの言葉にマーシェはふんっと、軽く鼻で笑う。
「何言ってんのさドイルド、まだ全然大丈夫でしょ~それにクラウィスだって用意してないじゃない」
「えっ……?」
一瞬耳を疑ってしまった。
けれど……本当にそう思っているみたいなので僕はそっとマーシェに訂正を入れてあげる事にした。
「…マーシェこそ何言ってるの?僕は今日午後からだよ」
「?…えぇ??」
「『永久(とわ)の響(ひびき)』参加者は午前中お休み、午後の説明会からの参加だよ」
僕が言う度にどんどん顔を青くさせていくマーシェにドイルドが時計を向けると、確かに後20分位で学園が始まる時間になっていた。
「やば???????いっ」
どたどたと自室へ走るマーシェに、やれやれといった風にドイルドがため息を付く。
「紅茶美味しかった、ありがとうクラウィス殿」
「お粗末様でした」
ドイルドは再び律儀に頭を下げると、仕方なしといった風に席を立ちマーシェの自室へと向かう、そのドイルドの後を眠そうなチェリーがトコトコと追いかけた。
すると部屋の中から、あれがないっ、これがないっ、あ??あれ忘れた??って騒ぐマーシェの声が聞こえてきた。
そして部屋から出てはまた同じ事を言って、どたばたと走り回る。
その言葉にドイルドさんは呆れながらもマーシェが言う言葉一つ一つに対応していき、その後をチェリーが眠そうな目を擦りながらついて行く。
…精霊って凄いね。
?
「じゃあ、行ってきまーす!!」
そして数分後。
バカでかい声と共に扉がバタンと閉まる。
すると、先程の騒ぎが嘘の様に静かになった。
ふと窓に近寄り空を見上げれば既に太陽の姿が見え、朝日がそっと辺りを照らしている。
果たしてマーシェは間に合うのだろうか…まぁ心配などしなくても大丈夫だろう。
きっと駄目だと思ったら、2人に魔力(ちから)
を借りて何とかするだろうし。
朝日が照らす空には、僕の好きな月がうっすらと輝いていた。
太陽が地平線に堕ち
空が闇に包まれ
あの月が再び光輝きだしたら…???
「???……あなたに逢える…のかな……?」
あなたの姿を瞳の裏に思い浮かべながら、僕はそっと呟いた。
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