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GENESIS -創世記- 更新再開。右の注意書きを最後まで読んでください。
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次の日、木棺で出て行った兄は、小さな箱となり、帰ってきた。
3日間自宅にて保管したのち、墓へ入れるそうだ。
母は相変わらず兄の箱を抱いて涙を流している。
離れたく無い、そう言って箱を抱き締めながら父を困らせている。
ねぇ、母さん。
それはもう、兄貴じゃないよ。
兄貴はそんな、小さな箱に収まるほど小さな男ではなかった。
俺は、そんな母と父をリビングに置いたまま、兄の部屋へ向かった。
兄の部屋は二階の一番奥の部屋。
前に入ったのは、いつだったかな。
兄は中高一貫校で全寮制の男子校である聖陵学園に12で入学した。
それから家に帰ってくるのはお盆や正月などの節目位だった。
久々に会う兄とはよく遊んだりしていたが、その時にも兄の部屋には入っていない。
なんとなく入ってはいけない気がして、入りたいとも言えず、入れなかった。
思い出せる記憶の中に兄の部屋の記憶はない。
ドアノブを握り、ゆっくり力を入れるとキィ、と音を立ててドアが開く。
綺麗な、部屋。
勉強机、黒を基調としたベットやソファ、黒いカーテン、銀ラックに本棚。
本棚には難しそうな参考書や辞書が並んでいる。
物はあまりなく、モノクロに統一されている。
ふらりと勉強机に立ち寄る。
机の上には本が一冊。
タイトルは…旧約聖書?
兄貴がキリスト教なんて、聞いたことなかったけど。
何か調べていたのか?
引き出しを引くと、綺麗に並べられた筆記用具類やノート。
ノートを手に取りパラパラとめくるとこれもまた綺麗に並べられた数列が。
他にも、世界史の書かれたノート、英文が書き連ねられたノート、様々ある。
兄は勉強のできる人だった。
この綺麗にまとめられたノートにも得心が行く。
もしかしたら、ノートの中に遺書らしきものでもないかと思ったがないようだ。
元の様にノートを戻した。
遺品整理、とは言わないが、兄の部屋を片付けると同時に兄の死の原因を探せるものがあれば、と思ったがそれもアテが外れたようだ。
特に変わった様子もないし、俺が変に触るよりもこのままの方が良さそうだ。
全てを元に戻し、一つ呼吸を置く。
さて、立ち去るか。
そう思ったが、なぜだか急に机にある旧約聖書が気になった。
そういえば、旧約聖書がここにあるのは、なぜだろう。
兄が最後に読んだ本はこれってことだよな?
ポツンと置かれた旧約聖書を手にとる。
ちょっと重い。
とりあえず適当に中を読む。
『はじめに神は天と地とを創造された。』
あぁ、旧約聖書ってこんな内容だったな。
『神は二つの大きな光を創り、大きい光に昼をつかさどらせ、小さい光に夜をつかさどらせ、また星を創られた。』
…あれ?
読み進めていると、兄の手書きの書き込みが突如現れた。
それは、聖書のとある一文章の直後にあった。
『神は自分の形に人を創造された。すなわち、神の形に創造し、男と女とに創造された。』
直後。
『アザゼルは天に。アダムよ、土に帰れ。そして、永劫呪われろ。』
それは、およそ兄が書いとは信じ難いほど、震えるほど力の込められた乱雑な文字。
文字から感情が伝わってくる。
兄の怒り、憤り、恐れ、悲しみ、全てを含んでいる。
急ぎ旧約聖書の最終ページをみると、寄贈は聖陵学園。
あぁ、これだったんだ。
俺は本を握ったまま、部屋を出て階段を駆け下りる。
そして、勢いよくリビングに入る。
驚いた母と父の顔。
「俺!聖陵学園へ行く!受験する!」
母も父も言葉はなく、ただただ目を丸くしただけだった。
序章 終
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