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試写会 1
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映画公開に先駆けて、明日試写会が行われる。
主要出演者や監督、スタッフはもちろん、ゲストや抽選に当たった一般人を交えての、けっこう規模のデカイ試写会になっているらしい。
という話を、奏にした。
ら、奏は難しそうな顔をした。
「どしたの、奏」
タオルで頭を拭きながら、ベッドに寝転がる奏の顔を覗き込む。
「いや、主要出演者が来るわけだろ?」
うん、と頷く。
眉間にシワを寄せた奏が、ぽつりともらした。
「あいつも、か」
あぁ。その表情から、誰を指すかすぐに分かった。
「来るね」
窺うように、心配?そうに俺を見上げる奏。
そんな奏に笑いかける。
「大丈夫だって」
まぁ正直会いたくないってのが本音。
けど、仕事だからしょうがない。
すんごいねちっこく絡んできそーだけどね。
って奏に言うと、…まぁ。って苦い顔。
「何言われても気にしないよ」
むしろ、戦ってやる。
そう意気込むと、奏は声を上げて笑った。
「たくましいな」
「奏のためならね」
「……そか」
照れてる?
かーわい。
そんな奏に、キスひとつ。
ふにゃって力のぬけたような笑みに、今度は吸い付くように、唇を奪う。
大丈夫。
どんなことを言われても、ここに奏がいるから。
その後奏を十分堪能して、ぎゅって抱きしめて眠った。
うし。
パワー充電完了、だ。
試写会当日。
想像以上の人数に、少し驚いた。
監督やスタッフ、出演陣に挨拶をしていると…例のあの人がやってきた。
「やぁ、日野くん」
「こんにちは、梁瀬さん」
さっそく笑顔で牽制ですか。
目が笑ってないっすよ。
俺も笑顔で武装です。
「もう他の人への挨拶は終わったのかな?」
「えぇ、一通りは」
そう答えるとますます胡散臭い笑みを深くして、ちょっといいかな?と会場の隅へと連れてこられた。
「君は、私を敵に回したいのかな?」
開口一番そう切り出されて、俺は怒りよりも呆れが先にきた。
しょっぱなから脅しですか。
…奏。
ほんとなんでこんな人と付き合ったの。
「できれば僕は誰も敵にしたくないですけど?」
とまぁ、一応本心を語る。
「そう。だったら、分かるよね?」
「何がですか?」
しれっととぼけてみる。
すると今まで浮かべていた笑みを消し無表情になった梁瀬さんは、目を細め睨みつけてきた。
「君はもっと利口かと思っていたんだが…どうやら違うようだ」
すいませんね。
「君はまだ若い。仕事だって、うまくまわってこない。
そうだろう?」
それは遠まわしに、すぐに潰せるぞ、と言いたいんですかね。
「君はこれはから羽ばたいていく人間だ。
私は応援したいと思っているんだよ」
私の邪魔さえしなければ。
っていう副音声が聞こえるのは気のせいですかね。
「利口になりなさい。
この業界、先輩の言うことは聞いておくものだよ」
あーー。
さっきから聞いてりゃ、ほんとウッザイ。
なんて心では思っていながらも、俺は愛想のいい笑みを浮かべ、梁瀬さんを見た。
そんな俺の様子に、「私の言うことがわかったようだね」とでも言いたげな、満足そうな笑みを浮かべた。
本当、俺この人嫌いだわ。
奏に関係あるから、とかじゃなくて。
人として、尊敬できない。
「利口になりなさい、ですか。
ご忠告、ありがとうございます」
そう返すと、ますます満足そうな笑顔をした。
「そうですね、あなたに会えて、僕はひとつ利口になった…というか、勉強になりましたよ」
そこで言葉をきって、俺はふっと笑う。
「この業界、尊敬できる方ばかりじゃない、ということが」
そう言葉を続けた俺に、梁瀬さんは眉をピクリと動かした。
「……どういった、意味かな?」
「言葉のままの意味ですよ」
愛想よく笑みを浮かべる俺とは対照的に、梁瀬さんの表情はどんどん怒りに染まっていく。
「私に、喧嘩を売っているのか?」
「いえ、そんなわけないじゃないですか。
どうしてそう思うんですか?僕は別に梁瀬さんを言ったわけでもないのに」
と、すっとぼけてみる。
自分で言うのもなんだけど、いい性格してるよな、俺って。
梁瀬さんはギッと俺を睨んだ。
その視線を、真正面から受け止める。
「……君、案外いい性格しているね」
「そうですか?ありがとうございます」
ニコリ、と笑いかけると、梁瀬さんは舌打ちをひとつしてから、口を開いた。
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