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18歳以上ですか?
事務員の竹下さんにしおりをはさみました!
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事務員の竹下さん
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「あちぃぢ!!!」
「きゃっ!」
小さな悲鳴がしたと思ったら、声の主が持っていたカップから黒い液体が、幸希の下半身に浴びせかけられた。
「あっちぢぢぃ〜〜!!」
余りの熱さに幸希は立ち上がって、そのまま後ろに転がった。
「雨宮さん!大丈夫ですか?」
近くにいた工事の金田が駆け寄ってきて、幸希の背中を支えてくれた。
「やだ〜!コーヒーかかっちゃった〜。」
その間の抜けた声に幸希はプチンとキレそうになった。
「ユキちゃん、なにやってんだよ!」
総務の木下がタオルと雑巾を持って、駆け寄ってきてくれた。
「え〜、なんか雨宮さんが真剣だったから、ジュースのCMみたいに頬にカップを当てて、驚かせようと思って。」
キャピキャピした声は事務員の竹下だった。
「ユキちゃ〜ん。」
木下の声には呆れた声にプラスして甘やかしている声が混じっていた。
「雨宮さん、大丈夫ですかぁ〜?」
竹下が少し屈み、身体をくねらせた。窮屈そうな制服のベストが目の前にあり、目のやり場に困った。
あまり反省の顔をしていない竹下にやり場のない怒りを覚えながら、立ち上がった。
「…竹下さん、僕は飲み物は自分で入れるからいいよって、この前言いましたよね?」
「あっ、でも今日は部長がお饅頭くれたんで。」
そういって竹下はフィルムに包まれた茶色の饅頭を見せてきた。
「それでみんなにコーヒー淹れたんです。雨宮さんのコーヒーは砂糖3つって覚えてし。」
幸希は一瞬、言葉を失うかと思った。
「…僕は砂糖は入れません。」
幸希は女性だから…女性だから…と念仏のように唱え、タオルを握りしめた。
「まぁまぁ。ユキちゃんもちょっと手が滑っただけだし。」
木下が宥めるように割って入ってきた。
「…手が滑ったら頬に当たるのかよ?」
(この巨乳好きめ!)
幸希はギッと木下を睨んだ。
木下はかけていた黒縁眼鏡を指で押し上げ、クネクネしていた竹下を手で払った。
幸希は腑に落ちない顔で、木下にタオルを投げた。
「怒るなって。あの子も悪気があった訳じゃないし。」
「悪気があったほうがまだマシだ。あの子の場合は常識がないから、いくらいっても聞かない。」
木下は曖昧な笑顔を浮かべながら、投げられたタオルを幸希の頬に当てた。
「赤くなってるな。金田くん、氷水で冷やしてあげてくれ。ここは俺がやっとくから。」
床に飛び散ったコーヒーを拭いていた金田が顔を上げた。
「下半身は大丈夫か?」
「やめろよ。」
木下が幸希のスボンを引っ張ったので、幸希は急いで身を翻した。
ふと足元の小さな茶色の水溜りに紙が落ちていた。
(あっ、レシート!!)
幸希は急いでレシートを拾い上げ、裏を見たが、数字は滲み、かろうじて末尾の”9”だけが分かった。
”9”だけて見ても全く数字が頭に浮かんでこなかった。
(…ずっと数字を見てたはずなのに…)
「レシートか?よかったな、大事なメモじゃなくて。」
木下が幸希の手からレシートを取り上げ、ゴミ箱へ捨てた。
「あっ…。」
つい幸希は声を上げた。
「行きましょう、雨宮さん。火傷してたら大変です。」
「う、うん…」
金田に手を引かれるまま、その場を後にした。
途中、振り返ってレシートの捨てられたゴミ箱を見ると、後悔が波のように迫ってきた。
(ごめん…)
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