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おっさんの飲み会
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”失ってから気づくもの”
っていうのは多いと思う。
物だったり、お金だったり、時だったり…いいだしたら、毎日後悔の日々だ。
「いや〜ユキちゃん誘っとけばよかったなぁ〜。まさか今日こんなに早く終わるとは思わなかったからな〜。」
真っ赤な顔した木下が手にしていたグラスを置いた。
「えっ?竹下さんを誘おうとしてたんですか?」
幸希の横で焼き鳥を食べていた金田が目を見開いた。
「だってなかなかこんな時間にみんなで終われることないじゃん。」
時計は午後7時を指していた。
「どっちにしろ無理ですよ!あの人、絶対定時には帰るじゃないですか!俺たちが早いって思う時間にはあの人は家帰って、夕飯も済んでるんじゃないんですか?」
珍しく攻撃的な金田にびっくりしながらも、幸希はうんうんと頷いた。
「金田く〜ん。興味ないの?あの胸に。」
木下は下品な手つきでジェスチャーをした。
「興味ないです!あんなの脂肪の塊でしょ?見てるだけで肩が凝りそうです。木下さんはあんな窮屈そうな人が好きなんですか?」
木下はキューとグラスに入ったビールを空けた。
「おうよ!男なら誰だってあれに埋まりたいもんよ!」
「でも竹下さんは雨宮の事が好きみたいだぜ。」
今まで黙っていた営業課の石渡がポツリと呟いた。
「ブッ!」
幸希は食べていた焼き鳥を吹き出してしまった。
「大丈夫か?」
バンッ!!
噎せる幸希の前で木下がテーブルを叩いた。
「マジっすか!!?」
「あぁ、見ればわかるだろ。」
すると今度は横の金田が立ち上がって、身を乗り出した。
「何言ってるんですか!?そんな…そんな訳ないじゃないですか!?」
「お前ら、この営業課の先輩の観察眼を見縊る気か?」
石渡はグイッと顎を上げた。
「いやいやいや!ないない!そんなに観察眼があるなら離婚しない!」
「そうですよ!しかも、3年も浮気されてたなんてあり得ないです!同情も出来ないです。」
「せめて同情しろよ!2軒目奢らねぇぞ!」
そういわれてようやく2人は大人しく座った。
(竹下さんが?俺を?)
幸希は眉間にしわを寄せた。
「あり得ないですよ。喋る事もないし。」
「いいや!あの子、入った時から雨宮の事、狙ってたぞ。一度、俺に”雨宮さんって彼女いるんですか?”って聞いてきたしな。」
「なんて答えたんですか?」
幸希が口を開く前に金田が身を乗り出して聞いた。
「なんてって…まぁいないはずだけどっては言ったな〜。」
そういって石渡は焼き鳥に噛み付いた。
「え〜ん。やっぱり、お前には勝てないよ〜。」
木下は机にうつ伏せになっていた。
「で!雨宮さんはどうなんですか?」
急に金田が厳しい口調で攻めてきた。
「どうって…。」
幸希は竹串をはしはし齧りながらシドロモドロになった。
「巨乳がいいんですか!?」
「いや…あの…俺はあの人のことはどうも思ってないから…。どちらかというと苦手だし…。」
「おい!雨宮は竹下さんのこと興味ないらしいぞ!」
石渡はうつ伏せになった木下の肩を揺さぶった。
「じゃあ…俺にもまだチャンスが!!」
木下が起き上がって、黒縁眼鏡を上げた。
「あぁ!まだ巨乳に埋まるチャンスがあるぞ!」
石渡がグラスを上げると木下もグラスを掴んだ。
「はい!先輩!」
カチャーンというグラスが合わさる光景が目の前で繰り広げられた。
「なんなんだ…。」
呆れ顔で横を見るとホッとしたような顔でビールを飲む金田がいた。
(もしかして金田君は竹下さんのこと…)
幸希は口の端に笑みを浮かべ、グラスに入ったビールを飲み干した。
「いらっしゃいませー!」
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