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暴れ姫と馬鹿巨人
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「なんでこんな問題が分かんねえんだよ‼︎」
「分からん‼︎なんでwillをwouldに直さんといかんがじゃ‼︎しかも過去形やと信じとったものをいきなりそれは仮定法じゃ言われても何がなんだか分からんわ‼︎仮定法の見抜き方はifやなかったんかい‼︎」
「ifに惑わされてんじゃねえよ‼︎それに助動詞の過去形だから仮定法になんだよ‼︎」
「なら『助動詞の過去形』でえいやないか‼︎仮定法なんざかっこつけた名前付けよって‼︎どれだけ日本人の脳みそ混乱させたいんじゃ‼︎wouldなんかにせんと普通にwilledでえいやないか‼︎ややこしいんじゃ‼︎」
ドン、と巨人が机を思いっきり叩いた。
こいつの勉強会に参加し始めて3日が経った。今日の放課後は見ての通り英語をこいつに教えている。
だが、今日もこいつは俺が出した問題をまだ一問も正解出来てない。会長が言ったようになんとか落ち着いて教えていたけど、こいつは俺の教え方に文句ばっかつけてきたから我慢出来なくなって言い合いを始めてしまった。
「大体、俺は日本人や。英語なんざyesとnoさえ知っちょけば何とかなるわ。」
「はっ‼︎今時中坊でもそんな事言わねえぞ‼︎ガキが‼︎分からねえからって逃げてんじゃねえよ‼︎」
「くっ‼︎ガキとはなんぞ‼︎俺は年上ぞ‼︎丁寧語尊敬語謙譲語‼︎その内のどれかを使って口を効け‼︎」
「その3つの使い分けも分からねえお前にはタメ口で十分だガキ馬鹿巨人が‼︎」
今度はバン、と俺が机を思いっきり叩いた。
ぐぬぬ、と巨人と睨み合い、ふんっと顔を背けて椅子に深く腰をかけ直す。
巨人は「全く。とんだ暴れ姫じゃ。」と呟いて机の上に置かれていた会長からの差し入れである500mlのペットボトルに入ったお茶をごくごくと飲み始めた。
「いっちゃん居らんと寂しい。」
ぐすん、と泣き真似をして巨人がそう呟いた。
「会長だって忙しいんだよ。お前にばっか付きっ切りでなんて居られるわけねえだろ。」
俺もペットボトルのお茶を手に取りごくりと一口飲んだ。
俺が言った言葉に、巨人は口先を尖らせて小さく「ちぇっ」と言い、本当にガキの様に拗ね始めた。
言い争ったから、無駄に体力を使っちまった俺達は、お茶を全部飲み干してしばらく向かい合わせに座り黙り込んだ。
最初は、会長が居ないからこいつと二人きりだなんて最悪だ。なんて思ってたけど、こいつが嫌いってだけの理由で勉強見てやるのを断ったら会長を困らせちまうと思った。
だから今日も勉強見るのを引き受けたんだ。
え、眼鏡は?って?
聞くな。あいつ、今日なんか俺に何も言わず帰りやがったんだ。メールは来てた。『また明日な。』とだけな。
……………………。
『また明日な。』だと⁉︎⁉︎
口で言えやボケくそ眼鏡が‼︎‼︎
しかも今日なんか英語だぞ‼︎お前の得意分野だろが‼︎会長が留守にしてんだから『今日は俺も手伝うよ。』くらいの気配りをしろってんだ‼︎
「……むかつく…‼︎」
「ん?」
つい心の声が口に出てしまった。
巨人はジトジトと俺を見てきて「ごめんな。イラつかせたい訳やなかったがよ。」と謝ってきた。
「別にお前にむかついてんじゃねえ。」
いや、十分むかついてるけど。
そんなすぐ謝られたら調子狂うだろが。
「なになに?俺やなかったら誰にむかついちゅうが?」
「誰でもいいだろ‼︎さっさと問題解けよ‼︎」
「あんっ‼︎もう‼︎やき言い方がキツイちや‼︎いっちゃんと話す時みたいに俺にも可愛いらしく話してや‼︎」
「なっ」
きゃぁんっ‼︎とぶりっ子ポーズを取った巨人をみると引いてしまった。
「気持ち悪いんだよ‼︎ぶりっ子やめろ‼︎それに俺が敬語使うのは会長だけなんだよ‼︎」
「…………」
俺は咄嗟に大声でそう叫んでしまった。
すると巨人はピクリと体の動きを止めて急に真剣な目つきで俺を見てきた。
「あ、あと……部長さん…」
急に真剣な顔されたから、つい小声になってしまう。
「…………」
「……………」
「…………」
「……おい……なんだよ…」
沈黙の中、じぃっと見つめられたから、俺なんか変な事でも言ったのかな?と思い「何見てんだよ。」って聞いたら、巨人は下を向いて、ボソリと呟いた。
「それは、いっちゃんの事を特別やと思うとるから?」
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