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彼の最終日にしおりをはさみました!
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彼の最終日
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ヒトミside
「……い、おーい」
ゆさゆさと揺さぶられて目を開ける。
ベッド…?あ、病院に泊まったんだっけか。てかアズマのベッドの上で寝てた。
俺を起こしたアラシはというと、ずっと起きてたのか寝ぼけている先生に珈琲缶を渡していた。
「…あ、もう外明るいんだ…」
窓を見ると空が明るくなっていて、ビルの隙間からもうすぐで朝日が見えそうだった。
「アズマはてめェが起こしてやれヨ。」
「うん。ありがとう。…アズマ、アズマ。起きて。」
ベッドの上半分を少し高くして座るような形にした。こっちの方が朝日が見えるだろう。
「………ん、…ヒトミ…?」
「俺だよ。ほら、もう初日の出が見える。」
「……………」
俺を見たあとに窓を眺めるアズマ。
「……からだ。」
「ん?」
「からだ…もう、動かないや。」
ぽつりと言った言葉。
思わず息を呑んだ。俺だけじゃない。アラシも先生も言葉にできないようだった。
きた。ついにきてしまった。
でも、不思議と心は静かだった。
「あのねヒトミ…ぼくが死んだら、僕の携帯見てね。…そこに、僕からの手紙があるから。」
アズマの手を握る。もう動かせないはずなのに、精一杯握り返そうと動かしてくる。
「アラシ、先生…最後まで僕のわがままに付き合ってくれてありがとう…ふたりとも、大好きだよ……」
「…あァ。」
「うん、うん…俺も、大好きだよ…」
アラシは全部を受け止めるように笑った。先生はもう涙が止まらないようで、両手で顔を覆っていた。
「…ヒトミ…こんな僕だったけど、選んでくれてありがとう……僕は、ヒトミに逢えてよかったよ…愛してる。」
思わず涙が出そうになって、必死に堪えた。涙なんかでアズマの顔がよく見えないなんて嫌だったから。
「…俺も、俺も、アズマのことが好きだ。…愛してるよ。俺と出会ってくれてありがとうな。」
全部を込めて笑った。ありがとうも、さよならも。
後ろから、光が差し込んだ。
振り向くと、黄色の綺麗な光の筋が俺たちに向かって伸びていた。
「綺麗…」
囁くように先生が零した。俺は声も出せずにただ見ていた。
光。
まるでアズマみたいな。
なんて、綺麗なんだろう。
ガラス越しなのに、冬なのに、その暖かさが伝わってくるようで。
「…綺麗だな、アズマ……」
ぎゅっと握る手に力を込めた。
でも、もうアズマは握り返してこない。
思わずアズマの顔を見た。
それはまるで、眠っているみたいだった。
「…アズマ…?」
俺の声にアラシと先生も気づいたようで、アラシはうつむいて何も言わず、先生は声をあげて泣いた。
なんでか、言葉がもれた。
「……おやすみ。」
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