アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
哀色グラデーションにしおりをはさみました!
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
- しおりがはさまれています
-
哀色グラデーション
-
誰が書いた文章だったのか
『雨が降る日は天気が悪い。』
6月4日は、吉野の誕生日だ。
だからなのか、何なのか。
近付くごとに、毎年鬱々としてきてしまう。
ぽつり
ぽつり
穏やかだった顔が
滲んで
歪んで
沈んで…
―全部、俺のせいだ。
だから、振り返れなかった。
2度と会わない。
家を出た時に、そう決めた。
目の前の垣根から、飛び出ている重たげな紫陽花は、複雑な色見のグラデーションだ。
―俺たちも、こんな感じだったのかもな。
同じ青に見えたけど
きっと、吉野の方は白が多かったんだ。
それでたぶん
俺の花の色のが、少しだけ濃かった。
今さら間違い探しをする気はない。
同じ場所にある紫陽花だって、年ごとに花の色は少しずつ変わってくる。
―忘れるべきなんだ。
吉野…。
どうか
忘れてくれ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
8 / 20