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drive (単発)
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オレが何を言い出そうが、どんなとんでもない無茶振りをしようが、いつも笑っていた。
そんな安原が、ただ一度、物凄く焦った様子になった時があった。
失恋して、いつも以上にどっぷり落ち込んだオレは、例によって、安原を呼び出し、砂浜の遊歩道を行ったり来たりしながら、気の済むまで、散々愚痴話に付き合わせた。
それでも、浮上のキッカケすら掴めず、乗り込んだ安原の車の中で、オレが何となく
「あーあ、帰りたくないなぁ」
とシートベルトをしながら呟いた。
その途端だった。
突然オレたちの乗った車が、目の前の赤信号を突っ切って走り出した。
「あのさ…俺も一応オトコなんだけど?」
掠れた声、少しもたついた発音。
車はぐんぐん加速して、景色が後ろへ飛んでいく。
張り詰めた空気の中、いつもと違う安原の様子が
何だかちょっと怖いような
この先が楽しみなような
少しだけ意地悪してやりたいような
複雑でとても高揚した気持ちが沸き上がって、オレは何も言えなくなった。
緩い上りカーブに道がさしかかった辺りで、スピードは自然に落ち始めた。
「やっぱりこの位置だよなぁ。」そう呟いて、手を伸ばした安原は、オレの頭をポンポンと叩いた。
気づけば、車はゆっくりとオレの家へと向かっていた。
ほっとしたような、少し気落ちしたような、切ないような、そんな夜だった。
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