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判断
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私の息子のしでかしたことだ。
こちらで解決すべきだと思い、眞人には事を知らせなかった。
過去に、自分の欲望に任せて眞人を傷つけた自分が、こんなことで眞人の傷を抉るような真似はとてもできなかった。
その日はとりあえず結威は具合を悪くしたと言って、布団を幹彦の部屋から客間に運ばせた。
二人はまだ小学生だ。学校である程度の知識はついているとはいえ、同性同士での間違いはないはずだが、万が一があってはいけない。
それから三連休の二日間を、結威の体調を監視せよとの命で、常に女中を同行させた。
心配したようなことが起こることもなく、結威は有紀子さんに連れられて帰っていった。
私は、幹彦を稽古場に呼び出した。
「座りなさい、幹彦」
稽古着に着替え、言いつけ通りやってきた息子は、無言のまま私と向き合って座った。
体つきだけなら、中学生と言っても通じるだろう。息子とひ弱な甥を引き離したのは、やはり懸命な判断に思えた。
「何故あんなことをした」
簡潔な問いかけに、幹彦はぴくりと反応した。
何で呼び出されたのかわかっているのだろう。鉄仮面が、僅かに顰められる。
「…別に」
「いつもあんなことをしているのか」
「…二回、だけ」
「もう二度と、するんじゃない」
ぴしゃりと咎められ、息子の表情はますます不機嫌そうに歪んだ。
何でだよ、と言いたげな視線を、頑として睨み返す。
「お前が…結威君を本当に大切に思っているのなら、もう二度とするな。お前のしたことは、結威君を傷つける行為だ」
「結威を…傷つける?」
「そうだ。約束を守れないなら、今後一切、お前を結威君に会わせない」
「……わかった。…もうしない」
言葉の意味をゆっくりと噛み締め、幹彦は素直に頷いた。
この時、我が子の言葉にほっとしていたが、あまりに従順な様に、違和感を覚えるべきだったのだ。
しかし、私も人の親だ。我が子を信じてやりたい気持ちが、疑いを上回っていた。
そして危惧していた事態は、数年後に起こる。
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