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見ててほしかったにしおりをはさみました!
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見ててほしかった
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俺のこと好きなら、もう少し優しくしてくれてもいいのに。
俺の質問に及川さんは顔を真っ赤にして狼狽えながらも、おずおずと答えてくれた。
「飛雄にずっと見ててほしかったから」
「へ?」
「俺の持っている全てを全部手に入れた飛雄が、俺に見向きもしなくなる事が怖かったから……」
あの及川さんが、怖いと言って寂しそうに笑うなんて。
「教えたらそれだけ早く上達して、何にも無くなった俺に興味を持たなくなって、離れていくだろ?
それが嫌だったんだ。
教えなければ、突き放せば、
お前は俺のことを必死に目で追ってくれるだろ?」
ずっと俺のことが好きで、俺を惹き付けるためにあんな意地悪をしたっていうのか?
なんだそれ……
「あんた頭良さそうに見えて、バカだったんですね」
「は、はぁ!?」
「あんたがそんなだったから、俺はあんたに嫌われてるって勘違いして、ずっと辛かったのに!
あんたにも嫌われて、チームメイト達からも孤立してしまって、一人でずっと寂しかった……」
中学の頃のことを思い出してしまい、無性に悲しくなって、鼻がツンとして痛くなった。
そんな俺に気付いた及川さんが、勢い良く立ち上がって、俺を抱き締めてきた。
中学の時必死で求めたこの力強くて、今は温かく包み込んでくれる腕に、強く顔をすり寄せた。
「だから、俺は青城には行かなかった。
自分のこと嫌いな人達がいる所に、わざわざ自分から飛び込んでいく人なんていないでしょ」
「俺は、飛雄をほしいと願いながら、反対にお前が離れて行ってしまう事をしていたんだね……」
「だから、あんたはバカだって言ってるんです」
「本当にバカだった…… 一人にしてゴメンね飛雄」
「及川さ、ん……」
俺は、涙を拭く余裕もなくて、ただ強く及川さんにしがみついた。
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