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過去は還らない19にしおりをはさみました!
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過去は還らない19
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「じゃあ、行ってくるよ。」
「…はい。」
靴を履き終わり玄関で振り返る月山さんに笑いかける。
本当は行って欲しくないのだけれど、月山さんは僕のために外へ行ってくれている。
流石に、そんな我儘は言えなかった。
「…夕方には帰るから、そんな顔をしないでくれたまえ。僕だって、カネキくんとずっと共にいたいに決まってるだろう。」
気持ちが顔に出ていたのか、困ったように笑う月山さん。
ここに来て随分と弱くなったなぁ、僕。
特にあの夢を見た日は一人が怖い。
不安で不安で、僕でいられなくなりそうなほど。
「…おいで、カネキくん。」
両手を広げた月山さんの胸に飛び込む。
「洗濯物も掃除も完璧にしておきます。」
「ああ。」
「少しでも遅くなったら嫌です。」
「出来るだけ早く帰るよ。」
「…すぐ帰ってきてくださいね。」
「Si.」
名残惜しいけど体を離す。これ以上このままでいれば、本当に引き止めたくなってしまう。
月山さんは最後に僕の手にキスを落として、幸せそうに笑いながらドアの向こうへと出掛けていった。
「月山さん…」
もう一度小さく名前を呼んで、自分の体を抱きしめる。
大丈夫。月山さんは帰ってくる。
ずっとそうだった。きっと今日も、そしてこれからも。
「…さて、やらなくちゃ。」
月山さんが帰って来るまでに仕事も全部終わらせて、いつも通り月山さんを迎えるんだ。
月山さんが、心配しないように。
少し不安のなくなった胸に手を当てて、僕はいつも通り家事を始めた。
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