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escape(脱出)
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ミカエラは床の上で気絶した男を仰向けて確認すると、自身のポケットから携帯を取り出し発信ボタンを押した。
「ハァイ、ドクター。捕獲成功よ」
電話の向こうの男に得意気に笑んだ狙撃手は時々銃声が響くエスカレーターの方角を見た。
「思ってたより随分呆気なかったわぁ。あの子供もアシバが追ってるから時間の問題ね。応援も不要よ。車を用意してちょうだい」
本当に捕らえられたのか、という男の疑問にミカエラは足元に倒れる白島を一瞥する。
「当たり前よ。彼を捕まえたら私もESPにしてくれるんで…、! ?」
目を離した一瞬の隙に通話している彼女の背後からゆらりと気配が揺らめく。あっと声を出す暇も無く狙撃手の意識は強い衝撃と共に闇へ落ちた。
*
「お電話変わらせてもらったぜ、ドクター」
ミカエラから携帯電話と機関銃を奪った白島はふらつく身体を手すりで支えながら非常階段で下へ降りていた。
『驚きました、あなたに麻酔は効かないのデスか?』
「…耐性があるからな」
電話の声の主は明らかに先日、運び屋を勧誘しに来たあの「ブランク・ベッタニー」と名乗った男だった。
ミカエラの話し声で意識を呼び戻し、薬が完全に身体へ回ってしまう前に彼女から解毒薬を見つけ出す事には成功したが、副作用は完全に消し去る事は出来なかった。倦怠感と痺れは未だに残っている。
「テメェらには聞きたいことが山ほどある…。あの女をいたぶっても良かったが、本人から聞き出すほうが早いだろう」
あの日「ボディチェック」を通して身体の情報をこの男へ渡してしまったことを思い出した。
「なぜ俺を狙う」
『おや、あなたはもう既に見当がついているのでは?』
「…だったら、赤猫という組織は一体なんだ?なぜあのピンク野郎が生きてる?テルを殺す理由は?口止めする必要は無いだろう」
まくし立てると、ブランクはクスリと吐息を漏らした。
『全てのことにお答えできるわけではありませんが、一つだけお教えしましょう』
もったいぶって間を開けた後、静かに言い放つ。
『あの少年は、どのみち死ぬ運命ですよ』
「なん…だと?それはどういう意…」
次の瞬間、大きな破壊音が響きアシバが4階フロアの扉から現れた。
「!」
「見ィつけたァ」
彼の手には携帯が握られている。ブランク越しに居場所が筒抜けだったようだ。
白島は舌打ちをして手にしていた携帯を放り5階フロアまで戻る。
追いかけて来た男は鎌で目標の背を狙う。それを躱すが薬の作用で足がもつれ、その場に片膝をついてしまった。
「もう諦めなァ。テメェは逃げられねえよ、運び屋」
アシバはワイヤーを巻き取りながら一歩ずつ攻め寄る。近づくなと、左手に持っていた機関銃を構え敵に向けた。
「じきに組織の人間がここへ来るぜ。その身体でオレと他の奴らを倒すつもりかァ?」
「罠だってことは100も承知だ。だが、俺たちが何も用意せずに来るわけ無いだろう…もちろんお前が居るのは想定外だが…!」
そう言いながら懐から小さな茶色の薬品瓶を取り出したかと思うと、相手の上空へと投げる。
そしてその瓶を銃で撃った途端、貫通した熱と火花が薬品と化学反応を起こし爆発した。
「なにッ!?」
「最終手段だ」
間一髪で直撃を免れたものの煙を上げ飛び散った薬品で焼け焦げた髪や肌を抑えるアシバに容赦無く鉛の雨を降らせる。それを避ける男の後を白島ではなく、別の銃がアシバの腰を撃ち抜いた。
「ガッ…!」
同時に二発目が再び男の脳天を貫く。いくら予知能力があったとはいえ、負傷した身体で攻撃を避け切ることは物理的に不可能だった。
物陰から現れた少年は徹底的に倒れたアシバの遺体を蜂の巣にし始める。
「おい、もういい…」
二度と生き返らないように破壊する相方を遮り、白島は力の抜けた溜息をついて死体に呟いた。
「身体検査を怠ったのが致命的だな…」
行くぞ、とテルに合図をして運び屋達はこの場所から走り去った。
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