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by stealth(忍ぶ)
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二人が一階へ降り立つ前に、フロアは黒い覆面を被り武装した男たちで埋め尽くされていた。どうやら赤猫の援軍のようだ。非常階段を含め出口は全て封鎖されている。
容赦なく銃を発砲し始める集団から運び屋達は逃げるように引き返し二階フロアの窓ガラスを叩き割った。白島は咄嗟にテルを小脇に抱えると外へ飛び降りる。集団が乗ってきた黒塗りのワゴンの上へ着地をはたすと追撃を避け、タイミング良く現れた愛車へ飛び乗った。
「掃除屋をアッシーくんにするんはどうかと思いますわ〜白島クン〜」
嫌味ったらしい口調で運転席の男はアクセルを全開にハンドルを大きく捻ると敵を二人ほど跳ね飛ばし、滑り込むように大通りへと走り抜ける。
「すまん、千坂」
白島は謝罪と共に呼吸を整えて肩の力を抜くと後部座席に座り直し、リアガラスから追っ手を確認する。あのビルへ向かう直前に念の為、車を掃除屋の千坂に預けておいたのだった。
「昔のよしみで手伝ってるだけなんやから、今後はこういうのは御免や」
「分かってる、多めに払っておくから」
「当たり前や。みんなには内緒やで〜ウチが運び屋まで始めたなんて知られたら大儲けやからなァ」
ケラケラと笑い飛ばし男は咥えていた煙草を灰皿へ押し付けた。
「で、どうやったん」
バックミラー越しに千坂は座席に落ち着く少年を一瞥すると片眉を上げ「ほぅ」と小さく漏らす。
白島は刀の柄を握りながら低く唸った。
「招待状なんてワザワザ寄越すから、あそこがヤツの根城か本人の出迎えでもあるのかと思ったが、そうでもないらしい。すると、捕まえること以外に、単に俺たちの行動を観察したかっただけか…他に目的があるのかは分からねえが…嫌味な野郎だ…」
「出向いただけの情報は得られたんか?」
「まあな…」
一息置いて、先程の光景を思い出すと痺れる手先を瞼の上に乗せる。
「一つ気がかりだったのは…お前に処理を依頼した男が生き返って化けて出てきたことだ…」
運転手は新しい煙草を咥えるも火をつけないままフィルターを強く噛んだ。
「赤猫、か。けったいな話やな…」
「また化けて出て来なきゃいいが…」
時間をかけて追手を撒いた車は人通りの少ない路地の小さなビジネスホテルにとまった。
千坂と別れた二人は、古臭く寂れたレトロなホテルの一室へひとまず身を潜めることにした。
「この部屋は前の相方と使ってた、隠れ家の一つだよ」
非常階段と隣接した角部屋、シングルベッドが二つ置いてある至ってシンプルな内装だ。白島は先の戦闘で汚れたジャケットを脱ぐと手前のベッドの上へ座り、奥側を顎で差す。
「そこのベッドの裏にアタッシュケースが隠してあるはずだ」
不思議そうな面持ちでテルは隙間へ潜ると、ベッド裏に貼り付けられた二つのシルバーケースを見つけ出した。中にはグレネードランチャーとショットガンが一丁ずつ収められている。どこか嬉しそうな顔つきになった少年はランチャーを肩にかけて構え、照準を窓に向けた。その様子を見て、白島は少し吹き出す。
「お前にはちょっと無骨すぎるな…」
身体に似合わない武器の大きさをからかうと、テルはまたいつもの無表情へと戻る。
「他の弾は玄関クローゼットの上だ。二重蓋になってる。…他の所にもいろいろ仕込んであるだろうから好きに探して使え。…もう取って怒るやつもいねえよ」
白島は軽く少年の肩を叩くとバスルームへと向かった。
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