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Ⅱ.assist(協力者)にしおりをはさみました!
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Ⅱ.assist(協力者)
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『まぁ、引き止めたところでその様子やと、諦める気は無いみたいやし。組織の事ならもっと詳しい人がおるんちゃうか』
*
すっかり夜も更けた頃。
黒く大きな革張りのソファにどっかりと座る大柄の男、八熊黒雪は膝の上で丸くなる毛足の長い洋猫を撫でながらゆったりと紫煙を吐き出した。
「ああ、確かに闘争で壊滅した安曇野(あづみの)組はウチの傘下だったさ。正月早々血祭り騒ぎで胸糞の悪ィ話だ」
向かい側に座る二人の訪問者を鋭い眦で睨むとそう吐き捨てる。
クリーニング屋を後にした運び屋達は、新たな手がかりを元に次なる目的地——涼葉組の本家へと訪れたのだった。当主の八熊は二人を快く迎えたものの、千坂から聞いた話を持ち出した途端に雲行きを怪しくした。
「でェ?これがこの間ウチの取り引きを妨害した例の赤猫とやらと関係があンのか」
「…それはまだ分からない。だが、壊滅を意図させた謎の集団について知りたい」
フン、と考え込むように鼻を鳴らした八熊は短くなった葉巻を灰皿へ投げた。
「オメーは爺さんも俺も贔屓にしてるからナァ、俗物を捕まえるッてんなら幾らでも協力は惜しまねえさ。——ンだが、奴らの事となると話は別だ。関わらんでくれ」
元より険しい顔を更に険しくした、いかにもヤクザらしい面持ちで八熊は唸る。その表情に少し怯みはするものの、白島はハッキリと前を見据えた。
「旦那は覚えていないだろうが…。ナルが…、昔の相棒があの中にいるかもしれない」
たっぷりと間を置いて、八熊は片眉を上げ面白いと言わんばかりに頰を緩め出した。あの野郎か、と思い出したように呟くと膝から猫を降ろし前傾姿勢で白島を覗こうとする。
「…ふん、そういう義理ってェのは嫌いじゃないぜ」
彼が新しい葉巻を咥えると、すかさず隣にいた側近によって火が灯される。
「奴等がどこの駒かは掴めてねェ、だが目的はハッキリしてる。俺たち組織の純粋な撲滅ってェトコだな。どこのシマの野郎も関係なく無差別に襲撃し、火種を撒いていくのさァ。これでも血眼になって探してンだ」
その言葉を待っていたと、すかさず白島は頼み込んだ。
「…邪魔にはならない。手伝わせてくれ。今は他の仕事を断ってる」
再び背凭れへ仰け反る八熊は白島の意図を汲み取る形でいいだろう、と肯定した。
いくらお得意様とはいえ、突然の要求を満更でもない様子で引き受けた気前のいい若頭は、ゴツゴツとした指輪の嵌った大きな掌で運び屋の膝を軽く叩いた。
「下手しやがったら前のようなケツ叩きじゃ済まねぇぞ」
ハハ、と乾いた笑いで返事をする男を少年は感心を交えた眼差しで眺めていた。彼の交渉は毎度ながら上手い。否、築き上げてきた信頼と人柄のおかげなのだろう、と。
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