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assist2(協力者2)
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自身が追われている身である事と警戒態勢真っ只中である涼葉組と手を組む事になった故に、すぐに行動できるように二人は八熊の配慮で屋敷の一室を借りることになった。
話し合いの後、部屋に着いた白島はスーツを脱ぎ置いてあった浴衣の袖に腕を通す。広くは無い和室だが小綺麗に整えられてあった。
障子窓を開けると、散りかけた見事な紅葉や松の大木が見える。細かい砂利の敷き詰められた庭園の奥の方には黒塗りの車が何台も停まっていた。
二階に位置するこの部屋の下からは、組員達の話し声が時折くぐもって聞こえる。
先程まで隣にいたテルは屋敷に住まう何匹もの猫に懐かれてしまい、見張り役と一緒に世話の手伝いをしに行ったようだ。
窓際に立膝をつき腰を落ち着かせ漸く一息つけた所で背後の襖が開いた。
「よう」
現れたのは相方ではなく、見事な毛皮が襟元にあしらわれたコートを羽織るこの家の当主だった。会議がひと段落ついたのか、ほんのりと酒の香りを漂わせた八熊はお供も連れずにずかずかと室内に入ると、何の躊躇いも無しに白島の隣へ座った。
些かか驚いて向き直る相手に薄ら笑み返す八熊は畳に寝かせてある刀を顎で指した。どうやらご機嫌らしい。
「それ、まだ抜けねェのか」
ああ、と頷いた白島は愛用している刀を目の前の男に手渡した。八熊は受け取ると柄を掴んで思い切り引っ張るものの、僅かにしなる音がした程度で一向に鞘から抜ける気配は無かった。
「…爺さんも物好きだからなァ」
肩を竦め持ち主に返した八熊は懐かしそうに溜息をつく。四年前、白島が仕事の報酬として得たこの刀は、涼葉組先代当主、八熊三七郎から譲り受けた物だった。
三七郎は若いにも関わらず機転の効く運び屋をとても評価しており、何かと理由を付けて呼び出すくらい、特に白島を気に入っていた。
八熊邸には当時一緒に仕事をしていたナルを置いて一人で訪れることが多く、実孫である黒雪に「死に際の我が儘だから聴いてやってくれ」と笑われたことがある。
先代が亡くなってから、此処へ来る事は本当の意味での仕事の時以外無くなっていた。
普段感傷に浸るタイプでは無いが、事情が事情の為にここ数日は特に昔を思い出すことが増えた。珍しく「懐かしい」と顔に書いてしまったであろう、白島の表情をニヤリと鼻で嘲笑った八熊はおもむろに腕を伸ばすと白島が纏っている浴衣の帯を掴み、自らの方へ引っ張った。
突拍子も無い行動に流されるまま、彼の懐へ引きずりこまれ慌てて遠ざかろうと腕を押し返す。名前の如くどっしりと熊のように構えた八熊は引き締まった腰を抱いて遠慮がちな抵抗を難なく押さえ込んだ。
「おい……?」
一体どういうつもりだ、と目で訴えるが元々クライアントとコントラクターという立場関係は変わらず強く出られない。腕の中で大人しくなる白島を、ヤクザの若頭は細い目を釣り上げ悪戯っぽく笑う。
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