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speculation(思惑)にしおりをはさみました!
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speculation(思惑)
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移動中の車の中、八熊は隣に座る側近にコッソリと耳打ちをした。
「オイ、あのガキは何とか撒けねェのか」
「ヘイ…。それが、なかなか賢いヤツでして…」
二人は困り果てた様子で前列助手席に座る少年をチラリと盗み見た。
白島と行動を共にしているだけあって、ただの子供でない事は周知の事実だが神出鬼没ぶりと身のこなしには組員も手を焼くほどだ。
運び屋達が涼葉組に身を預けてから数日間、彼らは主に八熊の送迎の仕事に携わりつつナルの足取りを探しながらスケジュールを共にしていた。
今度は車を運転する白島を眺めて眉尻を下げる。先日彼に手を出しかけた所をテルというガキに見つかり、それからというもの近づく隙を一切失っていた。
あの手この手で二人を引き離させようとするが、番犬のように必ず現れるテルによって毎度歯痒い思いを強いられている。無論、少年も此方の思惑を察知している。
初めて八熊が白島に出会った頃、彼はまだ初々しさを残す成人したばかりの青年だった。ヤクザの跡取りとして生まれ育てられてきた男にとって、白島の清廉さに驚くほど目を奪われた。己の私利私欲では絶対に動かない、それでいて人情に厚くとても一途なのだ。
三七郎も彼のそういった箇所に関心しており、八熊自身もまた祖父につられるようにして可愛がっていた。過大評価しすぎだと言われればそのような点もあるかもしれないが、白島と共に過ごした人間なら誰しもが気づくはずだ。
だが、長く闇に身を投じていけばいつまでも潔くいれるはずがない。いっそこの手に堕ちてしまえば余計な埃がつくこともないだろう、そう思い彼を的に定めてから早くも5年以上の月日が流れている。
三七郎が他界したあと入れ替わるように白島の相方になった男はサルバドール・ジョー、通称サルジョーと呼ばれる巨体で黒人の怪力男だった。
彼さえも白島の本質を見抜いており、護衛のように付いて離れず苦い思いをした。
あの男が居なくなったと思えば、次に現れたのがこの子供である。
一体どんなジョークかと内心手を叩いて喜んでいたが今は過去の自分を戒めなければならない。此方の懐に飛び込んできたこの機会が絶好のチャンスだというのに、ますます手が届かなくなる。
けれど単純に想いを伝える事に意味はない。愛だの恋だの、この界隈で咲かせようものなら必ず死と憎しみが付いて回る。
その縺れを嫌という程体感して見てきたのだ。今更、感情に「愛」などと銘打つことに反吐が出る。自身にあるのは「所有」と「欲望」のみである。
(そう、欲しいんだ。アイツが)
*
涼葉組の本社であるビルに到着すると、オフィスで早速会議が行われた。例の集団についての重要な情報が得られるというので運び屋達も幹部の護衛に混ざって会議の傍聴を許された。
オフィスには涼葉組の翼下に収まる団体や同盟間にある組のトップが揃って出席しており、挨拶もそこそこにすぐさま本題に入る。八熊の秘書がパワーポインターを起動させた。
「この一年、問題になっている集団についてですが。ヤツらの名前は『アンデゼール』どうやら欧米を中心に活動している連中のようです」
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