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give away(与えるもの)
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「輸血ってことか?」
頷いた景造はシャーレの上に薬を一粒取り出すとピンセットでカプセルを開けて見せた。中から赤く濁った血液のような液体が微量に零れ出る。
「どういう仕組みかは分からんが、この不老薬は細胞死のリズムを狂わせておるんじゃろう。投与を辞めた所で今さら正常には戻れまい…それどころか効能が切れると一度に懐死する恐れがある。そうすると様々な病の引き金になりかねん」
シャーレに蓋をし、物珍しそうな顔で椅子を寄せるとテルを老眼鏡の奥から覗き込んだ。
「テルくんの血液を抜き取って浄化しておく間、拓人の血を輸血する。治癒力を高める再生細胞が自ずと体を正常なバランスに戻していくはずじゃ。原理としては可能なんだが…」
言いつつ彼は真っ白な後髪を掻いて肩を落とすと不安気に語尾を引いた。
「これまで拓人の再生細胞を他人に移植したことが無いからのう…お前さんの体で機能するかは実験せんことには何とも…」
「移植…」
頑丈だと白島本人から聞いたばかりだが、先程からの耳慣れない単語に不思議そうな顔をするテルに対して景造は説明を付け加えた。
「こいつは変わった体質を持っててな。普通の人より死ににくい体になっとる。突然変異…良く言えばハイブリッドかもなぁ…」
続きを言いかけて少しの間があったが、肝心な事が分からないまま結局景造も白島もそれ以上については何も語らなかった。
医者は咳払いをすると嗄れた声で二人に問いかける。
「もちろん、試すんじゃろうな」
「ああ…それしか方法が無いならやるしかねぇよ」
ぽん、と背に手を添えてきた白島をテルは見上げた。
「いいのか…?」
「何言ってんだ、死なれちゃ困るって言ってんだろ…」
パートナーとはいえ、ここまで手厚く面倒を見てもらうことに些か抵抗があった。しかし彼の好意的言動に裏など無い事は分かっている。本当にどうにかしてやりたいと思ってくれているのだと。
僅かな間悩んだが「ありがとう、」とか細い返事をしたテルを見て白島親子は顔を見合わせ頰を緩めた。
「本当にお前さんたちは、なるべくして組まされたようなもんじゃな」
老人は重い腰を上げて立ち上がると早速準備に取り掛かった。
「もっと早く試してみれば良かったかもなぁ」
透析を終えた後、気分の安定しないテルとは違い白島は大量の血液を抜かれたのにも関わらず既に顔色を取り戻している。
彼の体質を知り、テルの中で確信に変わった事が一つあった。秘密にしているという事は、知られる事にリスクがあるに違いない。
白島は部屋から出るつもりか、立ち上がりジャケットを羽織る。その背中を呼び止めた。
「まだ何か、隠しているだろう」
そう探る様に投げかけると、彼は動きを止め頭だけで振り返った。
「赤猫は、お前の体の事を知っているんだな」
一拍を置いて再び前を向いた白島は煙草のケースを取り出すが、中味が空だったのか、くしゃりと片手で潰した。
「…だろうな。アシバが一度生き返ったのと関係ありそうだ」
そう言って空箱を屑篭へ放り、壁に立てかけてあった刀をベルトに挿すと部屋を仕切る水色のカーテンを引いた。
「どこへ行く」
「買い出しだよ。暫くここで過ごすことになると思うしな…」
姿は見えないが扉が閉まる音と同時にカーテンの向こう側から声がした。
「あんまり気にすんなよ」
(それは触れて欲しくないということか、此方の身を案じてくれているだけなのか)
テルは出口の方を見つめ鋭く目を細めた。
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